ハッピー・オールド・イヤー (2019):映画短評
ハッピー・オールド・イヤー (2019)ライター2人の平均評価: 4.5
年末の大掃除、今年はいろいろ考えるかも
断捨離で暮らしをすっきりさせるはずが、逆に捨てられなくなった経験がある人は少なくないはず。北欧でミニマリズムを学んだヒロイン・ジーンも捨てるはずのものにまつわる思い出や人間関係に葛藤することになる。ものを通じて別れた恋人に向き合い、捨てられる立場の悲しさに思い至ったり、借りっぱなしのものを返却して友人と和解したり。『バッド・ジーニアス』でも好演を見せたチュティモンは表情演技が上手で、ジーンの心の揺れを巧みに表現している。ジーンと別れた夫が残した品々に固執する母親の折り合いの付け方が気にはなったが、余韻が残るラストが素敵だ。それにしてもこんまりの “ときめき片付け術”は世界的に人気だな。
これを観ずして、2020年ベストテンは決められない!
“こんまり”だけでなく、サノスまで登場するポップでキャッチーかつコミカルな“断捨離あるある”として幕を開け、その対象がモノからヒトに移行する。一見クールで心地良い作風ながら、元カレをめぐるラブストーリーとして、父親や友人をめぐる人間ドラマとして、痛いところまでグイグイ切り込んでくる。そんな鋭すぎる視点など、日本ではこれまで劇場未公開だった鬼才ナワポン監督の集大成といえるが、「ダメ兄貴が出てくる映画、ほとんど面白い説」でもアリ。テンポは違えど、『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』に続く、タイ映画の新しい波として観るのも良し。年末の大掃除前に観て、一発喰らっておくのも良し!