ウォーデン 消えた死刑囚 (2019):映画短評
ウォーデン 消えた死刑囚 (2019)死刑囚の行方不明騒動が炙り出すイラン社会の不寛容と不公平
1966年のイラン。閉鎖の決まった古い刑務所で引っ越しの最中に1人の死刑囚が行方不明となり、昇進が約束されている所長は大慌てで捜索隊の陣頭指揮を執るものの、やがて問題の死刑囚が冤罪である可能性が浮上する。サスペンスとユーモアを織り交ぜた独特の語り口が、ある種の寓話的なムードを醸し出す作品。自分の出世のことしか頭にない刑務所長と対立し、死刑囚の人権を訴える社会福祉士が女性なのは、なにもイラン革命以前という時代設定だけが理由ではないだろう。そこには、現代のイラン社会にも脈々と受け継がれる不寛容で不公平な社会システムの問題を、弱者の視点から描くという意図があることは間違いない。
この短評にはネタバレを含んでいます