ワン・モア・ライフ! (2019):映画短評
ワン・モア・ライフ! (2019)ライター3人の平均評価: 2.7
やはり大人になれないダメ男は万国共通?
平凡な40代男が不慮の事故で亡くなったものの、天国の計算ミスで微妙に死期が早められたことが発覚し、92分間だけ猶予を与えられ地上へ戻ってくる。古典映画『幽霊紐育を歩く』の系譜に属する“甦りファンタジー”だが、本作の面白いところは主人公が徹底的なダメ男という点だ。女性にだらしない根っからのプレイボーイにして、家庭ではしっかり者の女房に甘えっぱなしの亭主関白。休日だって我が子そっちのけで、昼間から悪友仲間とバーでビール飲みながらサッカー観戦。そんな好き勝手に生きてきたイタリア式ダメ男が、死を目前にしてようやく家族の有難みを痛感する。いつまでも大人になれない男ってのは万国共通ですな。
人生のロスタイム、あなただったらどう使う?
バイク事故であの世に向かう途中の中年男パオロがロスタイム92分を手に入れ、蘇って生前の悔いをチャラにしようとするのだけど、やたらに寄り道するイタリア流にイラッ。しかも悔いる部分が浮気なイタリア男そのもので、そんな夫にほぼ愛想をつかしている妻の信頼を短時間で取り戻せるのは無理じゃないかと懐疑的に気持ちになる。こりゃもう、男性目線のファンタジーと目くじら立てずに笑うしかないな。とはいえ、私の笑いのツボが監督とズレていて、厳しい。パオロを見張る天国の係員がもっといい仕事してくれると良かったのだが……。ま、死ぬと分かっていても性格が変わらないパオロが実に人間臭い男って映画でしたね。
主人公のキャラに難アリすぎ!
物語の核となる、人生のロスタイムをめぐる92分のタイムリミットものとして観ると、こちらの期待と別方向に進み、緊迫感もなく、ユルい。しかも、主人公の中年男があまりにも器が小さい浮気男ということで、そのダメさを愛せないどころか、まったく感情移入すらできない有様。彼を演じる地元では多彩なマルチタレントと知られるピエルフランチェスコ・ディリベルトのキャラを知っていれば笑えるかもしれないが、これもなかなかキツいところだ。シチリア島の観光映画としては楽しめるが、『ローマ法王になる日まで』でしっかりドラマを魅せてくれたダニエレ・ルケッティ監督とコメディの相性はいかんせん悪いすぎ。