リーサル・ストーム (2020):映画短評
リーサル・ストーム (2020)ライター2人の平均評価: 3.5
掟破りすぎるメル・ギブ&“警官嫌いの怪物”
台風×サスペンスの融合だけに、『ハリケーンアワー』なノリかと思いきや、“アパート版『ダイ・ハード』<『リオ・ブラボー』”という異色作。過去を引きずる主人公の警官を演じるエミール・ハーシュが時折ジャック・ブラックに見えるなか、避難勧告をガン無視して部屋に居座る頑固ジジイを演じるメル・ギブ登場! まさかのソファに座ったまま芝居に驚かされるが、中盤になって、やっと重い腰を上げて参戦。一緒にコンビを組むステファニー・カヨの方が、娘役のケイト・ボスワースより美味しい役どころだったり、奇妙なバランスが持ち味だったりする。それにしても、“警官嫌いの怪物”という設定は掟破りすぎるだろ!
B級と侮るなかれ!
邦題からしてメル・ギブソンを担ぎ出したB級アクションと思われるかもしれないが、実はそんなに単純ではない。
一件のアパートという限定空間、警官と住人たちvs強盗団という戦いの図式。ハリケーンは彼らをこの建物内に閉じ込めておく設定に過ぎない。ミニマルな設定だが、そこに発火するスリルは、ミニマルゆえに急激に上昇する。
人間ドラマの名手ポーリッシュが監督を務めると知り、最初は疑問符も付いたが、限定空間にはキャラの人生もしっかりと凝縮されている。このような物語の密度の濃さは評価されるべきだろう。撃たれた老メルギブに「クソッ、懐かしい」と言わせるユーモアセンスも〇。