とんび (2022):映画短評
とんび (2022)ライター2人の平均評価: 4
令和の現在へと繋がる新たな物語を加えた映画版
過去にドラマ化もされた重松清の小説の初映画化。高度経済成長期からバブル全盛期を経た日本社会の移り変わりを背景に、不器用で頑固な父親と繊細で優しい息子の複雑な親子関係を紡いでいく。テレビよりも予算がかかっているだけあって、活気あふれる昭和の街並みや風情の再現度は非常に高く、さらに令和の現在へと至る新たな物語が加えられることで、親子3世代に渡る家族叙事詩的なスケールが備わった。『ニューシネマ・パラダイス』そっくりな音楽スコアをはじめ、あざとい演出は目立つものの、お互いさまの助け合い精神など今の日本人が失った「人情」を際立たせることで、これからの日本社会の在り方を問う映画に仕上がっている。
不器用だけど深く
都合3度目の映像化、映画としては初となる重松清の『とんび』。根幹の部分は変わらないものの2時間という映画の枠に納めるためにテンポアップする所はテンポアップさせています。それでもバタバタした感じがしないというのは瀬々監督の手腕によるところが大きいでしょう。
決して派手さがあるわけではないヒューマンドラマを魅力的に見せることに関しては抜群の信頼感があります。
主演の阿部寛、北村匠海の親子も良いですが、今作は特に脇の面々が素敵でした。安田顕、大島優子、麻生久美子、杏、濱田岳、麿赤兒そして薬師丸ひろ子。実力通りと言えばそのままですが、頼もしさすら感じる好演でした。