Arc アーク (2021):映画短評
Arc アーク (2021)ライター3人の平均評価: 3.7
大胆で斬新な世界なのに、この「懐かしい」味わいは、いったい…
遺体保存のためポーズをとらせる方法からして、アングラのパフォーマンスっぽいし(ダンス映画として独創的!)、背景の建築物や衣装も1960〜70年代のSFドラマのムードを醸し出している。スマホやPCのような現代の機器は極力排除され、時間が未来に進むと逆にアナログな機械が強調され、モノクロ画面になる。これって、映画を観るわれわれから、時間の感覚を奪っていくのが目的か? 永遠の命を望み、外見も変わらない主人公の意識を深部で体感させようとする監督の意図なのかも。
原作のコンパクトな物語を、これほど自由な作品にふくらませた努力に拍手。時折、セリフが文学的になるが、人間関係の脚色には現代的チャレンジ精神も。
岡田将生&風吹ジュンの「大豆田とわ子」組も好演
ポーランド出身の撮影監督、ピオトル・ニエミイスキとともに作り出す独自の世界観で、日本映画界に新しい風を吹き込む石川慶監督。待望の新作は、是枝裕和監督の『真実』の劇中劇「母の記憶に」のケン・リュウのSF小説という、かなりの賭けに出た。「母の記憶に」同様、不老不死という壮大なテーマを持つ人間ドラマに挑んだことは認めたいし、現代社会と繋がる美術など、観客をセンス・オブ・ワンダーな物語へと誘う説得力もある。とはいえ、石川監督の『愚行録』『蜜蜂と遠雷』に比べると、どこか軽い。135歳まで演じる芳根京子が堂々たる座長っぷりを魅せてくれるだけに、“決断”する描写の弱さが惜しまれるところだ。
不死を知り、命を知る
『蜜蜂と遠雷』で圧倒的なビジュアルセンスを発揮した石川慶監督がさらにそのセンスを推し進めたSF作品。
こんなテーマ、原作を邦画として映画化して見せるとは驚きの一言です。
ガジェットに頼らない未来の描写は、イマジネーションに溢れ何年経っても色あせることはないでしょう。
舞踏を取り入れたプラスティネーションの具現化にも驚きを感じました。
もちろん、物語を支えるのは主演の芳根京子。
不老不死という誰も経験したことがない役どころを見事に演じきりました。
不老不死といモノを通して有限の命について考えられる一本です。