やすらぎの森 (2019):映画短評
やすらぎの森 (2019)ライター2人の平均評価: 4
あなたは人生の最期の瞬間までどう生きたいのか?
美しくも壮大な森林地帯の広がるカナダのケベック州。自由を愛したがために60年以上も精神病院へ幽閉されていた老女が、それぞれ事情があって社会に背を向けた世捨て人の老人たちと、湖のほとりの森の中で第二の人生を歩もうとする。ケベック州といえば、独裁者として悪名の高い超保守派の州首相モーリス・デュプレシーが’59年まで悪政を敷いた場所。恐らくヒロインはその時代の犠牲者でもあるのだろう。言うなれば、自分の死に場所を探して森の奥深くへと辿り着いた老人たちが、これから本当の人生を始めようとする老女にある種の救いを見出す物語。あなたは人生の最期の瞬間までどのように生きたいのか?そう問われている気がする。
酸いも甘いも噛み分け、さらに人生は続く
自然との共存を選んだご老人のSDGs的な物語と思い込んでいたので、生と死にまで踏み込んだ深いテーマが心にずしんと響いた。ユーモアはあるが、家族に背を向けた人あり、人生を奪われた人ありと登場人物の歩んできた人生はそれぞれに重く、酸いも甘いも噛み分けた高齢者の選択には敬意を払うしかない。それがドラスティックに思えてもだ。孤独と愛、死ぬ権利など見終わった後、さまざまなこと考えさせられた。すべてを焼き尽くす一方で新たな生も生み出す森林火災がもう一つのキャラクターになっていて、物語に哲学的なニュアンスを与えている。ドラマの進行上で必要な女性写真家が最後まで部外者にしか感じられないのが残念なり。