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海辺の彼女たち (2020):映画短評

海辺の彼女たち (2020)

2021年5月1日公開 88分

海辺の彼女たち
(C) 2020 E.x.N K.K. / ever rolling films

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 5

なかざわひでゆき

人間をただの労働力として搾取する日本社会の現実

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 技能実習生として来日した3人の若いベトナム人女性。1日15時間労働で残業代も休日もなし、タコ部屋へ押し込められて昼夜も分からず、給料からは勝手に経費が引かれる。そんな地獄のような職場から逃げ出し彼女らは、ブローカーの手引きでようやくまともな仕事にありつくが、しかしそこには不法就労者としての厳しい現実が待ち受ける。実話から着想を得たというフィクション。しかし、密着ドキュメンタリーさながらの映像が、今も日本全国のそこかしこに暮らすであろう「彼女たち」の存在をリアルに実感させる。人間をただの労働力として搾取する日本社会の現実は、なにも外国人だけに限らない。だからこそ重くのしかかるものがある。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

日本のシステムの縁から世界に手を伸ばす傑作

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

藤元明緒監督(1988年生)の長編第2作。ミャンマー人一家を描く『僕の帰る場所』に続き、世界的な潮流でもある(だが日本では手薄な)「移民」を主題とするが、前作から表現が一気に研ぎ澄まされたことに驚嘆した。技能実習生のベトナム人女性3人組が極寒の津軽半島に行く。ワンシーンワンカットで捉えた88分のシンプルな物語に「ひとつの現実」がソリッドに凝縮されている。

言わばダンデンヌ兄弟級の精度と強度をガチで獲得。音楽も無く、環境音がリアルなサウンドスケープとして体に染みる。主人公格のフォンが独り、雪降る中を歩いていくシーンで選択した「長さ」が白眉だ。岸健太朗の素晴らしい撮影はまさに映画の生命線。

この短評にはネタバレを含んでいます
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