エターナルズ (2021):映画短評
エターナルズ (2021)ライター5人の平均評価: 3.6
オタ臭も感じるクロエ・ジャオ監督作らしいロードムービー
クロエ・ジャオ監督作らしいロードムービー的展開のうえ、多様性という言葉では収まり切れないキャラ立ちの巧さは、「幽☆遊☆白書」好きを公言する彼女のオタ臭を感じるほど。さまざまな愛が描かれるなど、MCUフェーズ4にして、かなりの意欲作といえる。ただ、独立性が強く、全体的なトーンやテンションが低いこともあり(ボリウッドスターのマネージャーを除いては!)、モノ足りなさも感じるかもしれない。とはいえ、いろんな意味で、設定や物語の壮大さ、余白を堪能する一作。“無双の鉄拳”のみで戦うマ・ドンソクの役回りには惚れ惚れするが、正直セルシ役は休業を撤回してマギー・チャンに演じてほしかったところだ。
マーベル×アカデミー賞=超実験作
MCU26作目にして、ついにオスカー監督が登場。クロエ・ジャオなので、通り一遍のヒーロー映画にしてくるとは思いませんでしたが、ここまで実験的な作品になるとは想像できませんでした。
キャスティングにしてもキャラクターにしても多様性に満ち満ちていますが、それもこの複雑に入り組んだヒーロー映画の一つの要素でしかありません。『シャン・チー』から本格始動したMCUフェーズ4ですが、早くも超実験作を投入してきました。
ちなみにマーベルというと前後の映画を見ていないのでどうなのか?という方もいると思いますが、これはほぼほぼ独立した話なので、そこは心配無用です。もちろんエンドロールもお見逃しなく。
多様性は高く評価できるが
ここまで多様なキャラクターを出してきたスーパーヒーロー映画は、初めて。カメラの後ろにいるのもアジア系女性だし、そこは大きく評価できる。だが、それらせっかくの多様なキャストが、まるで光らないのだ。大勢いるキャラクターにストーリーを与えないといけないのはわかるが、盛りだくさんになるのでなく、話が(時代やロケーションも)あっちこっちに散らばってただ忙しいのである。ロマンスを含むドラマの部分も、薄くて思い入れができない。そこはとくにクロエ・ジャオらしさを期待しただけに残念。アクションは見たことのあるようなものだし、マーベルにしては珍しく楽しさに欠ける作品と感じた。
"伸びていくなめらかな曲線"が物語を語りかけてくる
いわゆる善や悪とは関係なく、人類は宇宙の中の一要素に過ぎないと痛感させる壮大なストーリーが、大胆かつ現代的。
そんな物語の視覚化に際して、"独特の形に伸びていくなめらかな曲線"をモチーフにしたところが、監督クロエ・ジャオのセンスだろう。その曲線は、予告編でアンジェリーナ・ジョリー演じるエターナルズの一員が大気中から武器を生み出す時に出現し、「エンターテインメント・ウィークリー」誌のキャラ別表紙の彼らのヒーロースーツの表面にも描かれていたが、本編には他にもこの曲線に基づいた造形が登場する。そして、この曲線はエンドクレジットにも何度も現れて、見る者にその意味を問いかけてくるのだ。
多様性MAXの世界でクロエ・ジャオらしさが見えてくるのは…
原作以上に、そしてもちろんアベンジャーズやX-MENの世界以上に、あらゆる多様性を詰め込んだキャラ設定がとにかく今っぽい。
各キャラのエピソードの配分も展開に合わせて時系列(壮大!)をシャッフルすることで美しく整理され、それぞれの濃淡、ドラマチックさは、いかにも超大作らしい。永遠の命、そして人類の争いとの関係も過去のマーベル作品と一線を画し、とにかく新鮮。単体作品として観やすい。
クロエ・ジャオは、カナリア諸島の絶景が効果的なロケ重要視、マジックアワーの多用で「らしさ」を垣間見せるが、アクション映像を含め集団ヒーロー映画の定型を突き破るほどではない。監督の適度なバランス力が発揮されたと感じる。