ソウルメイト/七月と安生(チーユエとアンシェン) (2016):映画短評
ソウルメイト/七月と安生(チーユエとアンシェン) (2016)ライター2人の平均評価: 4.5
「岩井俊二とピーター・チャンの弟」的な瑞々しい力作
デレク・ツァン(1979年生)が『少年の君』の前に手掛けた2016年の単独監督デビュー作。ネット小説が原作ながら、岩井俊二『花とアリス』からの影響が濃厚。雪景色での『Love Letter』オマージュカットも見受けられつつ、プロデューサーを務めるピーター・チャンの『ラヴソング』的な大河ドラマのボリュームに拡張した趣だ。
むろん「シスターフッドもの」として内実は全く今の映画。女子2人なら安定してるのに、男(恋愛)が絡んでくるから世界はややこしくなるんだよ!という話。張芸謀の『サンザシの樹の下で』でデビューした安生役のチョウ・ドンユイが素晴らしく、監督との信頼のタッグは『少年の君』に続いていく。
『少年の君』の前におさえておきたい
保守的な優等生の七月と自由奔放で落ちこぼれの安生が織りなす、シスターフッド映画の決定版。『Love Letter』と『花とアリス』を意識しつつ、台湾金馬奨で主演女優賞を獲ったチョウ・ドンユイ&マー・スーチュン双方の魅力を引き立て、ミステリー仕立てなトリッキーな演出に、効果的なモノローグなど、人気原作を大胆に脚色したデレク・ツァン監督の才能が爆発。中盤でフェイ・ウォンの「いらいらする」を流したかと思えば、彼女の愛娘リア・ドウが歌う主題歌で締める、時代の変化を感じさせる演出も素敵すぎる。さらに、斜め上を行く出来の『少年の君』の前におさえておきたい前作であり、5年越しの日本公開を祝して、★おまけ。