カウラは忘れない (2021):映画短評
カウラは忘れない (2021)戦争体験者の肉声から伝わる反戦の思い
オーストトラリアの捕虜収容所で起きた脱走事件を題材にしたドキュメンタリーから浮かび上がるのは、日本人的な同調圧力の負の面。「生きて虜囚の辱めを受けず」と叩き込まれた兵士たちが捕虜となるや偽名を名乗り、家族が村八分にならないように心を砕く。捕虜=死なのだ。恐ろしい。「天国だった」と元捕虜が回想する収容所生活で芽生えた生への執着と、脱走の真意の矛盾やいかに? 当人にしかわからないメンタリティであり、生存者が抱える悔恨も浮かび上がる。究極の選択に疑問に抱きながらも元捕虜の思いを理解しようとする女子高生の優しさが心に染みる。語り継がれるべき歴史に焦点を当てた監督は、きな臭い現代に警鐘を鳴らしている。
この短評にはネタバレを含んでいます