ドント・ブリーズ2 (2021):映画短評
ドント・ブリーズ2 (2021)ライター6人の平均評価: 3.8
またも、わんこの使い方が巧い
前作ではドン引きもさせてくれた盲目の老人目線となり、モンスターから子どもを守るヒーロー化する流れは『ターミネーター2』。さらに、ジャンルがざっくりとホラーからアクションに変わったことは『エイリアン2』ということで、ジェームズ・キャメロンからの影響大か。後半では家屋を飛び出してしまうなど、掟破りな展開になるものの、光と闇のコントラストが特徴的なペドロ・ルケによる撮影など、前作からのトーンは変わらず。しかも、接着剤での口封じなど、R15+になったことで、『ランボー ラスト・ブラッド』ばりに“バイオレンス版『ホーム・アローン』”感強し。またも、わんこの使い方が巧いこともあり、★おまけ。
アイデアの面白さに、あの老人の物語が加わって超大盛り!
監督のロド・サヤゲスは短編映画の頃からフェデ・アルバレスと組み、『死霊のはらわた』『ドント・ブリーズ』でも共に脚本を書いた人物。なので、長編映画の監督は本作が初めてだが、テイストもストーリーの巧みさも、これまでのアルバレスと組んだ作品と同じ。前作同様、目の見えない老人がどう戦うのかというアイデアの面白さと、音響による恐怖演出の妙を追求しつつ、彼が超えなくてはならないハードルをさらに高く設定。彼には守るべき11歳の少女がいて、戦う相手は前作のようなヤワなティーンたちではなく、平気で人を殺す屈強な犯罪者たちなのだ。さらに、この老人がどんな人物なのかをより深く描く物語にもなっていて、超大盛り!
「いい人」になって、より座頭市に近づくも、描写の衝撃は倍々増
前作では、潜在能力にしても、奇襲作戦にしても「意外性」で驚かせたうえ、主人公の底知れぬダークさでも戦慄させたが、今回は彼が少女を守り、自己犠牲をみせるというヒーロー的側面も強調。より感情移入しやすい作りになっている。では逆に物足りないかと思いきや、描写では(いい意味で)グロさ、おぞましさを惜しげもなく投入し、別ベクトルで、観る者へのサービス精神をアピール。「ドント・ブリーズ」なのに「息をしろ」が生き残るポイントになる遊び心もあったりも。
かつてJ・ウォーターズやT・ソロンズの屈折青春映画で活躍したブレンダン・セクストン3世が『スリー・ビルボード』では一瞬だった邪悪っぷりを大炸裂させ感無量。
予想の斜め上を行く
『ドント・ブリーズ』の続編と聞いておお!!と思った言った一方で、前作が若干の余白を残しつつも結構“完結感”があった終わり方をしていたので、その続編となると、果たしてどんな風になってくるのかと思いきや…。
なるほど!?。こう来ましたか。サム・ライミが『今まで最高の続編アイデア』という絶賛の展開には素直に唸りました。やはり、このチームはただ者ではなかった。主人公をスライドさせるシフトチェンジも巧く機能しています。上映時間90分台と相変わらず、タイトで一気に駆け抜ける爽快感があります。ただ、バリバリのR15なので、そこはご注意を。
盲目のアンチヒーロが鮮やかに進化!
武装強盗を惨殺した屈強の盲人ノーマンの復讐劇ではなく、“生きる”意義を見出した彼の戦いが描かれる。身体的ハンディキャップを超える鋭敏な聴覚や触覚、嗅覚を武器として孤高の戦うスタイルは前作を踏襲するが、S・ラングが演じるノーマンの心理は大きく異なる。暴力的な生き方が招く結末を覚悟しつつ、一種の贖罪とも受け取れる第二の人生を歩んできた老人の孤高のバトルに圧倒されるはず。R指定ギリギリなアクションだけでなく、ノーマンの心理描写に重きを置いた演出をしているのは、これが監督デビューのR・サヤゲス。脚本も手がけている彼のキャラを知り尽くしたからこそのお手並みが見事だ。
そして“彼”はターミネーターとなった!?
目は不自由だが聴覚に優れ、なおかつタフな退役軍人。前作で彼がホラーキャラとして機能したのは物語が彼の視点ではなく、盗人の若者たちの視点で語られていたからだが、続編ではその公式をご破算にする。
主人公に転じた元軍人は少女を救うためにスキルを活かして命を懸ける。もはや彼は得体の知れないキャラではなく、見方によってはヒーローのよう。そういう意味ではホラーというよりサスペンアクション。中盤のヒネリも効いている。
1作目のヴィランが2作目では共感できるキャラに変わるという点で、『ターミネーター』シリーズを連想。不死身に近いキャラ立ちも成し遂げており、今後のシリーズ展開を夢想させずにおかない。