ミラベルと魔法だらけの家 (2021):映画短評
ミラベルと魔法だらけの家 (2021)ライター5人の平均評価: 3.4
「ヒロアカ」の影響も!?
これまでなら、いかにもディズニー・プリンセス顔である姉のイザベラが主人公になるところだが、丸メガネでドジっ子な妹になっているところが、2021年のディズニーらしさ全開。舞台がコロンビアということで、南米繋がりなピクサーの『リメンバー・ミー』との共通項も多い中、主人公が“ギフトを持たざる者=無個性”として捉えられるため、「X-MEN」<<<「僕のヒーローアカデミア」の影響もあるだろう。『ズートピア』の監督&脚本コンビだけに、移民問題や理想郷もテーマになっており、ミュージカルとしても楽しいが、説明不足なところも多い。原点回帰と取れる2D短編『ツリーから離れて』の方が、物語の奥深さを感じる。
自分の家族について、実は意外に知らない
リン=マヌエル・ミランダによる音楽に乗って多くの個性的なキャラクターが踊る今作は、楽しさいっぱい。だが、最後にはホロリと涙ぐませ、家族というものについてあらためて考えさせてもくれる。自分の家族については、知っているようで、実は意外と知らないもの。それに、家族だからみんな平等に愛しているよと言いつつ、優秀でなければいけないというプレッシャーをかけていたりしないか。そういったことを思いきりカラフルな世界の中でさりげなく語っていくのはさすが。コロンビアが舞台というのも、メガネをかけたディズニープリンセスというのも新しい。ディズニーアニメーションの記念すべき60作目にふさわしい作品。
持たざる者などいない
魔法を使える一家の中で唯一、魔法が使えないミラベル。”持たざる者”が主人公というところに新鮮さを感じました。しかし、映画が終わってみると、それもまた”その人の個性”であり“持っているモノ”であるということに気が付かせてくれます。
毎回ディズニー作品の邦題は巧さを感じさせるものが続いていますが、今作も良いタイトルですね。
一方で、原題がスペイン語で魅力を意味する『Encanto』ということですが、これはこれで素敵なタイトルです。
最近のディズニー作品のキャラクターは多様性を感じさせる設定が多いのですが、今作もまたそんな流れの一つでした。
ディズニーアニメは南を目指す
ミュージカル映画としてのディズニーアニメの楽しさを再確認できる一編。
伝統的プリンセスストーリーのような、いかにも欧米風の空気は皆無。『モアナと伝説の海』からさらに南下し、南米コロンビアが舞台というのが面白い。一族の中でただひとり魔法を持つことができなかったヒロインの物語は、『みにくいあひるの子』の今風のアレンジにも見える。
家族のドラマとして整っており、ファミリーで楽しめる堅実な作品であることは言うまでもない。ラテンのエッセンスを取り込んだダンサブルな楽曲もディズニー作品には新鮮で、甘ったるいバラードに逃げない点に好感。
新作ミュージカルとして、万全な構成と曲の楽しさ
「アナ雪」のように際立った曲はないものの、全体の曲の構成が本格派ミュージカルの趣。コロンビアが舞台なのでスペイン語の曲も加わり、リン=マニュエル・ミランダが自身のルーツを表現しつつ、ミュージカル作家として現在、乗りまくってる勢いを感じさせる。特に力自慢のルイーサのナンバーには、ミュージカルアニメとしての楽しさが凝縮。
基本的に、さまざまな魔法が使える家族の集まりなので、X-MEN的スーパーヒーローのように「何でもアリ」なノリではあるが、主人公ミラベルだけが、特別な能力をもたず、だからこそ特別な存在となる設定が、ストーリー上、効果的。映像は過剰なほどカラフル。ディズニーらしく、まとめ方も美しい。