クナシリ (2019):映画短評
クナシリ (2019)国後島のリアルな「今」を映し出す貴重なドキュメンタリー
北方領土・国後島の現在を記録したドキュメンタリー。島のあちこちに今も残る日本人の生活の痕跡が、かつてここが日本の領土であったことを物語る。ソ連侵攻後に真っ先に潰されたのが売春宿だったなど、当時を知る高齢住民が語る日本人の記憶も興味深い。現地当局はロシア実効支配の正当性を学校でも教えているようだが、しかし実際にそこで暮らす住民たちの生の声は非常に複雑だ。広大なロシアの片隅に位置する北方領土は、ソ連解体後の中央政府からは長年放置され続け、今なおまともな雇用もなければインフラも整っておらず、住民の大半は深刻な貧困にあえいでいる。遠く海の向こうに見える明るい日本の夜景に、彼らは何を思うのだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます