PASSING -白い黒人- (2021):映画短評
PASSING -白い黒人- (2021)グレーなモラルを語るのにモノクロはふさわしい
白人で通じる外見の黒人が白人として生きる。つまり嘘をついて生きるわけだが、今よりさらに人種差別が強かった時代、それは責められるべきなのか。グレーなモラルと、そこから生まれる葛藤を描くのにモノクロはふさわしい(肌の色の濃さにとらわれずキャスティングできるメリットもあったらしい)。人種をとっかかりに、今作はまた「アイデンティティとは」という大きなことも問う。それは同じような人を祖父に持つホールがずっと抱いてきた疑問。彼女は最も思い入れできる話で監督デビューを果たしたのだ。ビジュアルはとても美しく、それだけに、その内側にあるふたりの女性の複雑な心理がより心に迫る。
この短評にはネタバレを含んでいます