白い牛のバラッド (2020):映画短評
白い牛のバラッド (2020)形だけの謝罪と慰謝料で犯した過ちは許されるのか?
最愛の夫が冤罪で死刑に処せられたイランの女性。工場で働きながら幼い娘を育てる彼女に、司法は形式的な謝罪と慰謝料で片を付けようとしたことから、女性は担当判事の誠意ある説明と謝罪を求める。死刑制度の問題はひとつのテーマだが、しかしそれが焦点ではない。ある人物の登場によって、本作の核心が徐々に炙り出される。起きてしまったことだから、多額の慰謝料を支払うのだから、公式に罪は認めたのだから、同情しているのだから、相手だって辛いのだから、それで犯した過ちは許されるのか?さらに、未亡人や独身女性に厳しいイラン社会の男尊女卑もヒロインの肩にのしかかる。「贖罪」と「尊厳」について重い問いを突き付ける佳作だ。
この短評にはネタバレを含んでいます