TITANE/チタン (2021):映画短評
TITANE/チタン (2021)ライター6人の平均評価: 4.2
チタン女子暴走!
何かに目覚めるヒロインは相変わらずだが、匂わせばかりで興醒めすらした前作『RAW~少女のめざめ~』とは異なり、冒頭から痛みを強調したバイオレンス描写を畳みかけるジュリア・デュクルノー監督作。ひたすら突き進んでいく疾走感が心地良く、『クリスティーン』や『クラッシュ』をも思い起こさせる悪趣味テイスト満載の『鉄男』ならぬチタン子から目が離せなくなる。その暴走劇に絶妙なユーモアも注入されるほか、中盤以降に疑似家族な展開に突入することで、さらにカオス化。性の解放から多様性へと進んでいく、着地が見えない愛の物語は“『恋する遊園地』の向こう側”をみせるだけでなく、ある種のトラウマを残す!
クローネンバーグ的世界の発展型、これは凄い!
“車とセックス”という題材はクローネンバーグ『クラッシュ』の変奏曲。そこに肉体と異物の融合、血なまぐさいバイオレンスなどの『ザ・フライ』的な要素が絡む。
交通事故に始まる物語は最初から不穏な空気を漂わせ、最後まで観客を落ち着かせない。ヒロインの官能、彼女の凶行の鮮烈、無機質物との性行為の異様……衝撃性にはホラーのような恐怖感が宿る。
デュクルノー監督は前作『RAW 少女のめざめ』と同様に、そこには留まらず、先を見据える。異形の愛、しかし強い愛――古典的なテーマだが、本作にはめ込むと肉体的な哲学や、ジェンダーなどの社会性がにじみ出る。着地点には唖然とするしかない!
クローネンバーグ的なボディホラーの変異種
カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得したジュリア・デュクルノー監督(『RAW-少女のめざめ-』)の最新作は、人間と車がまぐわう文字通りの「カーセックス」シーンが象徴するように、ストーリーを額面通りに受け取ってはならない異形の不条理劇である。それゆえに様々な解釈を許容する作品だが、「望まぬ肉体の変容」が浮き彫りにするジェンダー規範の有害性と抑圧された人間の欲望には注目すべきだろう。そういう意味で、これはクローネンバーグ的なボディホラー映画の変異種とも言える。あえて観客の神経を逆なでするような性描写や残酷描写も多く、間違いなく賛否は大きく分かれるはずだ。
すごいものを見たという気持ちがいつまでも抜けない
前半は容赦ないバイオレンスがたっぷりで、とてもこのまま見続けられないという気持ちになるが、途中からトーンが変わり、最後には、予想しなかった、胸に迫る結末が待ち受けている。見終わった後も、すごいものを見せられたという気分がいつまでも抜けない。好き嫌いは分かれるだろうが、独創性に満ちた芸術であることは確か。この映画を作ったのが女性であるということも、業界が考えてきた常識をぶち破る。監督ももちろんながら、主演のアガト・ルセルの大胆さにも感服。文字通り体を張り、少ないセリフの中で見せる彼女の演技は、最近見た中で最も勇気のあるものだと言っていいだろう。とにかく強烈な映画。
★とも★★★★★とも、めまぐるしく評価分かれる完全なる問題作
前半の描写は生理的に許容できない人も多いだろう。肉体が欠損する、あるいは、しそうな瞬間の生々しさ、痛さ、グロさに何度も目を覆いたくなり、その瞬間が意外なほど多発。しかし攻めの姿勢に清々しさも感じ、愛の結晶のドス黒き美しさに恍惚……。
主人公がジェンダーを超越する変容は、バレそうでバレないギリギリのライン。何かとジェンダーで分けたがる固定観念が軽々と叩き潰され、こちらも快感だ。
全編を通して強烈なインパクトを放ち続けるものの、映画全体から大きなトラウマを受けたり、人生観が変わる類ではなく、そこはちょっと不思議な後味。見たことのない動物と初めて触れるような、妖しく蠢く映画と対峙した感覚が残る。
揺さぶられます
時折、狂い咲く時のあるカンヌ国際映画祭ですが、これはまたすごい映画をパルムドールに選んだものです…。
まさに怪物的な映画という言葉がぴったりな一本です。
よくこれがコンペティション部門に残り、しかも最高賞にまで到達したものですね。
言葉を選ぶ映画で、何をどう言ったものかと頭を抱えてばかりですが、一言いえば”試されます”。
あなたはこの映画を見てどう感じるか?という強烈な問いかけが突きつけられます。
ぜひ劇場で、思い切り心身を揺さぶられてください。