ZAPPA (2020):映画短評
ZAPPA (2020)ライター2人の平均評価: 4.5
音楽にチョイ重めの哲学を結びつけた怪人の記録
このところ音楽ドキュメンタリーの秀作が続き、ロック好きとしては嬉しい限りだが、本作も見るべき逸品。
ザッパの名はカリスマとして多くのロックファンの脳裏に刷り込まれているが、前衛的な音楽性ゆえにヒット曲と呼べるものは少なく、なじみは薄い。売れ線に走らない頑固さがザッパを特別な存在としており、本作はその哲学に焦点を絞る。
生演奏が困難な曲を創作する一方で、政府の音楽検閲に反対するザッパ。それらを地続きのものとしてとらえているのが巧い。The GTOsつながりで『スパークス・ブラザーズ』を連想したが、同作の哲学の軽やかさと見比べるのも一興だ。
ザッパならこう言うね、的な現代偉人伝
91年、プラハでのロシア軍撤退を祝う式典にフランク・ザッパが招かれた場面でこのドキュメンタリーは始まる。もし氏が存命だったら、凄惨な軍事衝突が起こっているウクライナ侵攻にどう発言するだろうか? 『ビルとテッド』のビルことアレックス・ウィンターが監督を務めた本作は、音楽の秘密より(エドガー・ヴァレーズによる覚醒、「編集」「不快さ」などの主題は語られるが)、「この人を見よ」的な哲学や行動原理にアプローチした内容だ。しかも極めて真面目に。
そこでなんと、複雑怪奇な鬼才像以上に、真っ直ぐブレないザッパ像が堂々立ち上がってくる。言わば「御意見番」が放つ、政治や表現、カネなどにまつわる金言=思考の数々!