LOVE LIFE (2022):映画短評
LOVE LIFE (2022)ライター3人の平均評価: 4
深田晃司ユニバースのインフィニティ・ウォー
この怒涛の展開! 悲劇と喜劇、深刻さと大らかさの振幅が尋常ではなくでかい。ベルイマンもあれば、ルノワールもある。大胆かつ周到な設計による転調は、そのたび世界像が塗り替えられるような新鮮な驚きと感動をもたらす。深田晃司演出の恐るべき濃度。団地の空間設定がまず素晴らしく、韓国手話も含めて「距離」がひとつの主題となり、人間同士の関係性が連動する形で可視化されていく。
矢野顕子の名曲にアンサーする形で“人/生”の多層性を複雑に刻み込みつつ、『歓待』『淵に立つ』『よこがお』『本気のしるし』等で見られた様々な深田印エレメントが固有の肉体を伴って交錯する様な圧巻の二時間だ。「闖入者」シリーズ集大成の感も。
生きていくことの痛み
待望の深田晃司監督最新作。矢野顕子の同題曲からインスパイアされたという本作は生きることの痛みと愛の在り方を感じさせる映画。
木村文乃、永山絢斗、砂田アトムの3人の物理的、そして心理的な距離感の醸し出し方が実に絶妙で、これに深田監督の演出と主題歌が重なることで心の芯を撃ち抜かれた気持ちになりました。
静謐な画のなかででの激しい心の動きを描くというのは深田監督の特技と言っていいのかもしれませんが、今回は特に冴えています。
引きの絵のラストシーンには唸りました。
思わず衝撃で声を上げそうになった瞬間も…
モチーフになった矢野顕子の曲や、集合団地で幸せそうに暮らす家族の様子から、穏やかで柔らかなヒューマンドラマの予感を漂わせつつ、そこは深田晃司監督。日常に立ち現れる凶暴な違和感も発生。今回は、その表現が予想外のベクトルでショッキングだった。主人公の揺れ動きまくる心情をなぞるように、基本、どこに着地するかわからないストーリー。その不安定感こそ本作の魅力。
主人公、現在の夫、元夫という主要キャラ、その誰に寄り添うかで作品の印象も分かれそう。感情移入しかけた人物が、唐突な言動をとったり、その逆だったり…。求める愛の姿は人それぞれ。シビアな現実を突きつけるが、終わってみればタイトル曲に優しく包まれる。