知られざるマリリン・モンロー:残されたテープ (2022):映画短評
知られざるマリリン・モンロー:残されたテープ (2022)ライター2人の平均評価: 4
古き良きハリウッドとアメリカ社会のどす黒い闇
1962年に36歳の若さで亡くなった20世紀最高のハリウッド女優マリリン・モンロー。その死因は自殺と公式にも認められているが、しかし依然として不可解な点も少なくないため、当時から様々な憶測や陰謀説が取りざたされてきた。これは、そうした長年の論争に終止符を打つドキュメンタリーと言えるだろう。若くて美しくて才能のある女性を一握りの権力者男性たちが食い物にする、かつてのハリウッドおよびアメリカ社会の歪んだ搾取構造。古き良き豊かなアメリカのどす黒い闇が頭をもたげる。当時の映画界や政界の裏側を知るキーパーソンたちの生々しい証言も興味深く、華やかな黄金期ハリウッドの暗い一面を垣間見ることが出来るだろう。
60年前の謎の死に、センセーショナルに迫る
突然の死から60周年となるタイミングで再びモンローの人生に迫る今作は、センセーショナルでアメリカのテレビで見るセレブの生い立ち番組か、実録犯罪ミステリーのよう。“残されたテープ”は、ノンフィクション作家アンソニー・サマーズが本を書くために取材した時の録音。その音声に合わせ、雇った俳優に口パクで演技をさせているのが、テレビっぽい雰囲気をさらに強める。彼女の死にまつわる謎の検証が焦点ながら、そこはすべてサマーズが本のために40年も前に見つけていたもので、新しくはない。ただ、もっと突っ込んで欲しかった興味深いところもいくつか。とくに、男たちに「利用された」と感じていたモンローの言葉は重くのしかかる。