凪の島 (2022):映画短評
凪の島 (2022)ライター2人の平均評価: 3
美しい海と暖かな人情に育まれた少女の成長譚
舞台は瀬戸内の小さな島。父親の飲酒癖が原因で両親が離婚し、母親に連れられて祖母の家で暮らすことになった幼い少女・凪が、風光明媚な島の大自然と素朴で暖かい住民に囲まれて健やかに成長していく。で、そんな島の人々も、実は人生の痛みや哀しみを秘かに抱えているものの、それでもお互いに支え合い励まし合いながら生きている…ということで、古き良き大映や松竹の人情喜劇を彷彿とさせるハートウォーミングな作品。どこまでも人間の善意や良心に信頼を置いた真っ直ぐなストーリーは、斜に構えたシニシズムが蔓延する昨今の日本では賛否あるかもしれないが、しかしだからこそ新鮮な清々しさを感じさせてくれるようにも思う。
『天国はまだ遠く』好きには嬉しいサプライズも!
岩井俊二監督の初期作のプロデューサーながら、常にシンパシーを感じているのがダダ洩れな長澤雅彦監督作。自身のオリジナル脚本である本作でも、篠田昇に師事した神戸千木による撮影で、冒頭から「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」ばりに子どもたちや女性教諭の姿を瑞々しく捉えていく。やや二面性もあるヒロインを演じた新津ちせの芝居の巧さは言わずもがなだが、彼女の両親を加藤ローサと徳井義実が演じるという、『天国はまだ遠く』の主人公2人の“その後”とも受け取れるサプライズが用意! さらに、人々の温かさによって癒されていく丁寧な演出など、しっかり長澤監督らしい作品になっている。