AKAI (2022)：映画短評

　天才ボクサーとして「浪速のロッキー」と呼ばれた時代の赤井英和の軌跡を、当時の貴重な記録映像や試合中継映像などに最新インタビューを交えながら紐解いたドキュメンタリー。息子の赤井英五郎氏が監督を手掛けている。この手のドキュメンタリーというのは、良くも悪くも表層からは見えない本人の素顔にどれだけ迫ることが出来るのかが重要だと思うのだが、そういう意味で掘り下げが不十分なように感じられることは否めないだろう。そこはもしかすると、実の親子という監督と被写体の近すぎる関係性がネックになったのかもしれない。とはいえ、赤井英和が人気ボクサーだったことを知らない世代に、当時の熱気を伝えるには十分な作品だ。

本家“イタリアの種馬”に続いて、“浪速のロッキー”もスクリーンに登場！　モスクワ・オリンピックのボイコットがプロ転身のきっかけになり、初の世界戦では自身で予告していた「7ラウンドTKO」を反対にされ、2度目の世界戦でも7ラウンドKO。その後、生存率20％の手術からの驚異的な回復を遂げるなど、かなり波乱万丈だった赤井英和のボクサー人生が綴られる。西成の診療所でのバイト風景や人気を博した試合後のユニークなインタビューなど、当時の映像からもただならぬタレント性を感じられる、『どついたるねん』までの道。ただ、喧嘩王だった学生時代の武勇伝が語られなかったのは、ちとモノ足りない気も……。