ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド (2020):映画短評
ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド (2020)ライター3人の平均評価: 4
貴重なドキュメンタリーにして、良質の青春映画
人気絶頂期のビートルズにインドの瞑想施設で偶然、出会ってしまったカナダ人の若者。そんな彼=サルツマンが、その後、映画製作者として活動していたからこそ本作は生まれた。まず、その奇跡に感謝。
ビートルズのドキュメンタリーという側面は、やはりファンには興味深い。とりわけ、ジョン・レノンの名曲において、ネガティブなモデルとなってしまった人物へのインタビューはスリリングで目を引く。
一方で、本作はサルツマンの若き日の冒険をノスタルジックにたどった青春ドラマの側面もある。そういう意味では、『あの頃ペニー・レインと』を見終えた後にも似た甘酸っぱい感触も。
ビートルズと過ごした1968年の記憶
1968年2月から数か月間、ビートルズはインドの道場で超越瞑想を学びつつ、作曲活動に専念していた。これは当時たまたま同じ道場に入門し、ビートルズのメンバーと親しくなった若者の記憶を追ったドキュメンタリーである。その若者というのが、本作を監督したカナダの記録映像作家ポール・サルツマン。ビートルズに頼まれて撮影した大量の写真を、30年以上も忘れていたらしいが、この損得勘定のない天然キャラがジョンやポールに受け入れられた理由であろう。当時の思い出の場所を巡り、様々な関係者を取材しつつ、名曲の誕生秘話が紐解かれていくのだが、その背景に浮かび上がる’68年という時代の自由な空気が実に魅力的だ。
68年のビートルズと「僕」、そして現在のD・リンチ!
1968年2月から4月、ビートルズの4人がインドのリシケシュに旅する。超越瞑想の導師マハリシのアシュラム(僧院)に滞在し、ドノヴァン、ビーチ・ボーイズのマイク・ラヴ、ミア・ファローらと修行を重ねた。その内の8日間、「カナダ人の青年」として奇跡の邂逅を果たしたのが監督のポール・サルツマンだ。彼が当時撮った写真が素晴らしい。浮世の喧噪から逃れて「内なる平和」を求めたスーパースターのリラックスした姿――穏やかな表情の4人が写っている。
再現アニメも含めて当時の旅を追っていく中で、異彩を放つのがデイヴィッド・リンチ御大だ。ビートルズの話にはほぼ触れず、超越瞑想の伝道者として元気な姿を見せてくれる。