バビ・ヤール (2021):映画短評
バビ・ヤール (2021)モノクロームの「闇の歴史」は、まさしく今の現実と重なり合う
記録フィルムを再構築して批評的に歴史を捉え直す試み――『粛清裁判』や『国葬』に続くセルゲイ・ロズニツァ監督のアーカイヴァル・ドキュメンタリーだが、この新作はまず「本物」素材の「戦争映画」だと規定できるだろう。今回は相当鮮明に音/声を加え、劇映画のようなサウンドが実現。結果、「史実の再現」として撮られた数々の既成作を蹴散らす生々しさを衝撃的に突きつける。
独ソに挟まれた二次大戦中のウクライナ。1941年9月のキエフを映し出す前半はナチスドイツによる占領。そしてユダヤ人大虐殺、グロスマンの痛切な詩の引用を挟み、後半はスターリンの統制。ロズニツァいわく「問題はイデオロギーではなく、人間の本性だ」。
この短評にはネタバレを含んでいます