チケット・トゥ・パラダイス (2022):映画短評
チケット・トゥ・パラダイス (2022)ライター4人の平均評価: 3.3
こういう映画があるといい
物凄いアクションがあるわけでもスーパーヒーローが登場するわけでもない。人気シリーズの一本というわけでもない。ごくごく普通のロマンティックコメディ。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツという並びだって、豪華だけど新鮮な組み合わせとは言えない。しかししかし、見てしまう映画。なんだかほっとしてしまう映画。こういうハリウッド映画に飢えていた部分があることに気が付かされました。リゾート地を舞台にしたロマンティックコメディはハリウッドのセンスでないと成り立たない部分があるので本当に貴重です。
このふたりを見ているととびきり楽しくなる
オル・パーカー監督は最初からクルーニーとロバーツをイメージしつつ脚本を書いたとのこと。私生活でも仲の良いビッグスターらの掛け合いは、パーカーが期待した通り抜群に楽しい。コメディのタイミングはすばらしく、とりわけ映画の前半は思いきり笑わせてくれる。最初は嫌い合っていたふたりが、という設定はロマコメの定番だし(もっともこのふたりの場合は一度結婚したので最初は好き合っていたのだが)、娘が間違った相手を選んでいないのは観客には明白で、ストーリーに意外さはない。しかし、そもそもこのジャンルは結末までの過程をどう楽しませてくれるのかがポイント。その意味で今作はミッションを達成している。
人気スターのラブコメは、南国バカンス映画の魅力もたっぷり
映画スターとは、きっとこういうもの。ジュリア・ロバーツとジョージ・クルーニーが、それぞれイメージ通りの人物を楽しそうに演じて、それを見ているこちらを楽しい気分にしてくれる。主演2人の、実生活でも以前からの友人で仲がいいという関係はドラマにも反映されていて、中でも夜の海辺の酒場でふざけて騒ぐシーンの2人は、素のままなのではないかと思ってしまうほど。
そのロマコメ要素と同じくらい魅力的なのが、南の島の気持ちよさ。登場人物たちが普段の生活から離れ、青い空、青い海、いつもとは違う文化風習に触れて、新鮮な感動を味わい、新たな自分を見つける。そんな南国バカンス映画の魅力もたっぷり詰まっている。
ワーキング・タイトルらしい安定感と幸福感
「オーシャンズ」以来のカップル(今回は元夫婦)となるジュリア・ロバーツ&ジョージ・クルーニーだが、画面に登場するだけで華やかな空気を作り出し、さすがトップスターと改めて納得。おたがい意地を張り合う言葉のボクシングも名人芸の域かと。
娘の突然の結婚になぜそこまで反対するか、その理由が弱めだし、混乱を誘う計画も思いつきのグダグダ感あるものの、ワーキング・タイトルのポジティヴ志向の伝統が重なり、妙に微笑ましく観てしまうから、あら不思議。
バリ島やオーストラリアの海岸でロケした、きらめき度満点の映像は素直にテンションを上げ、俳優の魅力+楽しいストーリー+ゴージャス感という“映画らしい映画”は満喫可能。