Sin Clock (2023)：映画短評

　理不尽な取り引き先や上司から責任を押し付けられて解雇され、タクシー会社に転職してみれば運転手を見下す横柄な客から踏みつけにされ、別れた妻子とも疎遠になったツキのない男が、それぞれワケアリな同僚たちと組んで美術品強盗を計画する。一度転落した者にセカンドチャンスは許されず、強者には甘いが弱者にはとことん厳しく、正直者ばかりが損をする日本社会で、人生の一発逆転を賭けた男たちを描く和製フィルムノワール。ラストのどんでん返しを含めていまひとつ盛り上がりに欠ける気もするが、昨今の日本に漂う重苦しい閉塞感を捉えたハードボイルドな雰囲気は悪くないし、人生の悲哀を感じさせる窪塚洋介の渋い佇まいもなかなかいい。