M3GAN/ミーガン (2023):映画短評
M3GAN/ミーガン (2023)ライター5人の平均評価: 3.8
人形はもちろん、端末依存もリアルに怖い
AIの暴走も、殺人人形もホラーの題材としては目新しくないが、それでもミーガンのキャラに引き込まれてしまう。
しつけも、子守りもこなす“お友だち人形”。ユーザーと接すれば接するほど、その情報を吸収して、どんどん親密になる。その過程で邪魔者を消そうとする目的が生じ、AI暴走の恐怖談がかたち作られていく。
興味深いのは、これを子どもにあたえることの影響。大人だって忙しいし、育児の時間を割けるなら便利ではあるが、そこに子どものコンピューター依存という問題も見えてくる。高度端末化社会の負の部分は、本作のもっとも怖い点かもしれない。
いろんな意味で、ホラー初心者向け
『ソウ』シリーズのビリーや『死霊館』のアナベルなど、人形にこだわり続けてきた『サスペリア2』大好きジェームズ・ワン原案だが、リメイク版『チャイルド・プレイ』(19年)をさらにアップデートした印象は否めない。子育てなどの社会問題に切り込んでいくあたりは、さすがジェイソン・ブラム製作であり、マルティカ「トイ・ソルジャー」のピアノ演奏など、『マリグナント狂暴な悪夢』の脚本家、アケラ・クーパーらしいブラックな笑いや『ターミネーター』な終盤の強引すぎる展開も楽しめる。とにかくキャラ先行で、ポップ&キャッチーさを徹底していることもあり、ホラーが苦手でも観られる作りになっている点は評価したい。
まるで人間なのに、決定的に違うもの
対話型AIが身近になった今、タイムリーに登場するのが、学習型AI搭載でまるで人間のように会話し行動する9歳の女の子型玩具、ミーガン。『ターミネーター』でもおなじみの進化して暴走するAIものだが、本作は外見が"かなり人間に近いのに違う"のがポイント。「まるで人間のようなのに、決定的に人間ではない存在」に人間が感じる恐怖感を、たっぷり味合わせてくれる。一方で、ミーガンの行動が人間とは極端に違うために、笑ってしまいそうになる場面もあり、この笑いと恐怖の狭間の感覚も妙味。
現在、同じ監督&脚本家による『M3GAN 2.0』が企画進行中で、今度はどんなふうに進化するのか、その進化ぶりも気になる。
チャッキー、アナベルからさらに別次元。AI怖すぎ未来予想図?
このAI搭載の人形ミーガンは持ち主の感情を学習し、知識をどんどん蓄積しながら“お友達”として暴走していく。機能がどうアップデートされるか、その流れが納得できる段階を踏んでいきテクノロジーとしてリアリティ満点。当然ながら、いま何かと話題のChatGPTなどを彷彿とさせる。
声色を使ったりは序の口。ミーガンの多様な能力を観てるだけで面白いが、だんだん視点がミーガンになっていくと怖さが逆転。ホラー的演出がちょっと笑えるし、あの「ダンス」は最高のスパイスとして作品を濃厚味にする。
生身の俳優とCG、パペット。どう使い分け、融合しているか。人間と人形の完全な中間点となる「顔」に最高級の映像表現を実感。
さすがジェイソン・ブラムとジェームズ・ワン!
笑い、衝撃、怖さを絶妙に盛り込んだ娯楽作。第一の勝因は断然ミーガンのデザインにある。ホラーと人形は昔から良いコンビだが、ミーガンもかわいいのか不気味なのか微妙(この特殊メイクを手がけたのは『ザ・ホエール』でブレンダン・フレイザーを変身させたエイドリアン・モロー)。しかも彼女はAIなので動く。いつのまにかそこにいたという古典的な驚かせ方もやってみせるし、何よりダンスをはじめとする動き方は頭に焼き付いて離れない。ばからしい魅力の中に、フェミニスト、LGBTQ、テクノロジーの脅威、子育てなどタイムリーな要素もさりげなく含まれていて、とにかくさすがだ。