パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 (2022):映画短評
パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 (2022)ライター4人の平均評価: 3.5
圧巻のカーチェイスと胸アツな人間ドラマのバランスが絶妙!
高額報酬と引き換えに「ワケアリな荷物」を目的地へ送り届ける運び屋の女性ドライバーが、冷酷非情な悪徳刑事に命を狙われた幼い少年を守るために命がけで戦う。さながら『トランスポーター』×『グロリア』。韓国ならではの複雑に入り組んだ狭い裏路地を爆走するカーチェイスなど、ハリウッド映画も顔負けの凄まじいカーアクションに圧倒されるが、主人公が実は家族を失った脱北者だったり、悪徳刑事との駆け引きに国家情報院まで絡んできたりと、観客を物語に感情移入させてスリルとサスペンスを盛り上げる脚本の上手さも光る。改めて、こうした「良質なエンターテインメント」は今や韓国映画の独壇場であることを痛感させられる。
ベッソン風ヒロインアクションが韓国で炸裂!
『トランスポーター』の女性版と思いきや、大人と子どもの逃避行、悪徳刑事の衣装や芝居がかった振る舞いなどの『レオン』の色も混じる。そんなベッソン作品的なロマンとスリルが妙味。
しかし、なんといっても本作の見せ場はカーアクション。韓国の庶民的な街並みを猛スピードで駆け抜け、大通りから路地まで遠慮なく突き進む豪快さはむしろ“ワイスピ”風。P・ソダムの凛としたキャラも生き、ドライビングテクにも説得力を与える。
設定的にはツッコミどころがあるものの、スピード感とエモーションで押し切る潔さは買い。ヒロインの上司や国家情報院の女性エージェントなど、脇キャラの濃さも魅力。
クールなパク・ソダムの血みどろカーアクション
『パラサイト 半地下の家族』で貧しい一家の妹を演じたパク・ソダムがクールな凄腕の運び屋に扮して、激しいカーアクションに挑む。彼女が運ぶ訳ありの荷物が、『パラサイト~』で共演した金持ち一家の教え子役チョン・ヒョンジュンというのが面白い。マニュアル車を駆使したトリッキーなカーアクションはもちろん、ソン・セビョク扮する残虐非道な悪徳警察官の一味から子どもを守るため、小柄で細腕のパク・ソダムが身体を張って必死に戦おうとする場面もグッと来る。脱北者の主人公や不法滞在者、親を亡くした子どもなど、居場所をなくして肩を寄せ合う疑似家族が、自分たちの居場所を守るために血みどろになって戦う話でもある。
スピードだけじゃなく、狭い路地や坂道でのテクに度肝を抜かれる
ワケありの相手、およびブツを確実&超速で秘密裏に送り届ける『トランスポーター』の女性版であり、年齢の離れた少年との絆には『グロリア』や『レオン』が頭をよぎり、なおかつその2人が『パラサイト』でも似たような関係で……と、数々の映画のエッセンスが物語にしっかり機能した作り。
冒頭でいきなり発揮されるドライバーテクが圧巻で、とくに韓国らしい坂道や狭い路地を駆使したチェイスは、緩急も鮮やかで文句なくアドレナリンを高める。
国家情報院や脱北者の実態が旨味のスパイスとして生かされてるのも韓国映画らしい魅力。展開や設定の無理矢理感でツッコミどころも頭をもたげつつ、そこもこの種の作品では許容範囲か。