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小さき麦の花 (2022):映画短評

小さき麦の花 (2022)

2023年2月10日公開 133分

小さき麦の花
(C) 2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

なかざわひでゆき

人と人が支え合って生きることの美しさ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 中国の貧しい農村。真面目で不器用な中年男性と、子供を産めない体で家族にも苛められた内向的な中年女性。まるで厄介払いでもされるように、親族が勝手に決めた結婚で夫婦となった彼らは、互いに肩を寄せ合いながら大地と共に生きていく。一体いつの時代か?と目を疑うような、経済発展から取り残された農村地帯。その中でも最下層に属する夫婦。そんな2人が過酷な環境にもめげず、ただ黙々と農作物を育て、自分たちが住む家を建て、相手を思いやっていく姿が淡々と映し出される。人と人が支え合うことの美しさ。中国では都市部の若者を中心に大ヒットしたそうだが、現代の中国社会が失った大切なものをそこに見出したのかもしれない。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

激動の社会からそっと立ち上がる個と個のつながり

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『僕たちの家に帰ろう』のリー・ルイジュン監督(83年生)による破格の珠玉作。彼の地元・甘粛省の農村が舞台。家同士の都合で結婚したふたりの男女が唯一無二の純愛を育んでいく。何千年も前からある様なシンプルなお話が、日常描写の積み重ねで有機的に醸成され、背景では近代化・現代化の波が容赦なく押し寄せる。

同世代の中国(系)監督の中では異例なほどローカリズムが強い。第五世代(特に初期チャン・イーモウ)の審美的な土着の映像と、第六世代(例えばジャ・ジャンクー)の社会と個を見つめる視座の継承。より本質的な影響元はブレッソンか。『バルタザールどこへ行く』の末裔かの如きロバがこの小さな愛を静かに見守っている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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