シャドウプレイ【完全版】 (2018):映画短評
シャドウプレイ【完全版】 (2018)ライター2人の平均評価: 4.5
現代中国の闇と病理を炙り出すフィルムノワール
土地の再開発を巡って住民と不動産業者の対立が深まる中、政府側の担当責任者が殺されるという事件が発生。その背後関係を調べ始めた刑事が汚職の匂いを嗅ぎつけたところ、自らが殺人の濡れ衣を着せられ警察から追われる身となってしまう。現代中国社会の闇と病理を炙り出すハードなフィルムノワール。物語の鍵となるのは、中国が本格的に改革開放路線へと舵を切った90年代以降の歩みだ。社会主義市場経済は確かに中国を豊かにしたかもしれないが、その代わりに大切な何かを失ったのではないか。拝金主義が蔓延する弱肉強食の中国社会へ疑問を呈する。政府批判をギリギリ一歩手前で抑制している辺りに、ロウ・イエ監督の苦労がしのばれる。
四半世紀を駆け抜けるエネルギッシュなノワールサスペンス
ロウ・イエ監督らしからぬエンタメ大作が、現地公開から約4年を経て日本公開。しかも、中国政府の検閲によってカットされた香港パートでのエディソン・チャン演じる探偵の登場シーンが復活した【完全版】として! 豪華キャストが織りなす四半世紀を駆け抜けるノワールサスペンスは、暗闇を捉えるドローンを使った暴動シーンで幕を開け、欲望にまみれたドロドロの愛憎劇へと突入。アクション監督をノーマン・ロウ(ブルース・ロウの息子!)が務めただけあって、ド派手なカーチェイスや爆破シーンが盛り込まれるほか、ヨハン・ヨハンソンによる劇伴もツボる。基本ハズレなしなロウ・イエ初心者にもおススメしたい仕上がりだ。