プチ・ニコラ パリがくれた幸せ (2022):映画短評
プチ・ニコラ パリがくれた幸せ (2022)ライター3人の平均評価: 4
あったこともなかったことも記憶の一部。
1955年に始まる、物語担当ゴシニとイラスト担当サンペの二人によるプチ・ニコラ創造についての物語をプチ・ニコラの画調で描いたアニメーション。しかし作品には原作のエピソードが相当量挿入されており、幼少期の思い出話から、小学校生活が始まりキャラクターが増え、主人公も成長し女の子に恋心を抱き…。つまりプチ・ニコラの創造は、彼ら自身の子供時代を再び体験するような気持ちにさせるものだった。ゴシニ一家がアルゼンチンへ移住したことや、サンペがNYで活躍したこと、MADの創設者カーツマンとの出会いなど、戦前から70年代にかけての世界文化史が垣間見えるのも面白い。サウンドトラックもとにかくご機嫌でよろし。
ノスタルジックで最高に胸キュンなフレンチ・アニメ
好奇心旺盛でヤンチャな少年ニコラの賑やかな日常を描いたフランスの国民的な絵本シリーズ「プチ・ニコラ」。その生みの親である漫画家ジャン=ジャック・サンペと作家ルネ・ゴシニの友情を軸としながら、「プチ・ニコラ」の誕生秘話と各エピソードに込められた想いや願いを紐解いていくフレンチ・アニメーションである。まずは、’50~’70年代の古き良きパリの街角を鮮やかに再現した、ノスタルジックで小粋でお洒落なビジュアルが最高に胸キュン!さりげないレトロな小物などのディテールも可愛い。この世界観はフランス語じゃないと雰囲気が出ないよね、ということで字幕版がおススメ。ちょっぴり切ないストーリーもたまらない。
人気児童書の物語と、作者2人の人生が重なって
構成がユニーク。1959年~1965年にフランスで刊行され、今も愛される児童書「プチ・ニコラ」シリーズを、原作のイラストそっくりの画でアニメ化。さらに、この児童書の著者2人、作家ルネ・ゴシニとイラストレーターのジャン=ジャック・サンペの人生を、まったく同じタッチのアニメで描く。そして、この3つが重なって、また別の物語を浮かび上がらせる。
色調を抑えて際立たせた線の味、原作同様の空白を活かした構図、軽やかな音楽。それらが生み出す世界を見ていると、エスプリという言葉が浮かぶ。画風に見覚えがあるのは、サンペが1978年以降の「ニューヨーカー」誌の表紙を多数手がけているからか。