わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏 (2023):映画短評
わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏 (2023)ライター2人の平均評価: 2
せっかくのいい機会なのに監督の視座がない。
ル・コルビュジエ設計の国立西洋美術館の引っ越しをドキュメントした作品だが、あえて言えばそれだけでしかない。例えば『ようこそ、アムステルダム美術館へ』などリニューアルと共に地域との共生を再構築するに至る経緯を詳細に描いたものであるとか、技術的細部にこだわる美術ドキュメンタリがあふれる中、ほとんど前庭の彫刻を梱包し移動するさまや倉庫の整理に終始した感。作品の保護修復、海外への作品貸し出し、ル・コルビュジエが当初想定した観客導線の復元、リニューアル最初の展覧会のキュレーションなど、どれをとっても突き詰めるべきものがもっとあったはずなのに。結果、極めて凡庸な「記録」にしかなっていないのが残念。
裏側を見るのは、おもしろい
普段は見ることができない"裏側"を見るのはやっぱり面白い。説明のナレーションは一切なく、そこで行われていることと、そこにいる人々の談話を映し出すという形式。撮影期間は、整備のために全館休館した2020年10月から2022年6月の開館前までなので、現在もほぼ同じではないだろうか。
美術品を倉庫に収納する方法など物理的な舞台裏に加えて、美術館にある部署、その仕事、それをする人々、彼らが行う会議や、展示物の置き方一つについて現場で検討する様子などのソフト面も映し出される。人々が自分の仕事について話す途中で急に雄弁になる時の、情熱の噴出も印象的。美術館の展示を別の視点から見るためのヒントがある。