デューン 砂の惑星PART2 (2023):映画短評
デューン 砂の惑星PART2 (2023)ライター6人の平均評価: 4.7
格の違う映像表現
もし当初のスケジュール通りに本作が公開されていたら、今年のアカデミー賞の結果は相当荒れたかも。F・ハーバートの原作から意図されていた『アラビアのロレンス』のDNAを独自培養し、IMAXの「砂」の芸術が全面展開。サンドワームの砂上スキーひとつ取っても恍惚&悶絶。映画史上、最高に洗練されたヴィジュアルワークの凄みに震えた。
ヴィルヌーブ監督の世界観の作り込みは圧巻。役者の目玉はフェイド=ラウサ役のA・バトラー。リンチ版でスティングが演じ、ホドロフスキーはミック・ジャガーを想定していた悪の貴公子がこんな強烈キャラに結実するとは。『砂漠の救世主』の物語に踏み出すPART3は如何なる境地に達するやら!
サンドワームに乗りたい!
そこで終わるか!という前作の構成ゆえ、続きが見たくなるのは必然。待ちに待った続編は、期待にたがわぬスケールの大きさに目を見張った。
主人公ポールの成長のドラマが、まずいい。砂漠での試練を経て、しだいに表情にたくましさが宿り、救世主としての風格が身についていく。前作では少年のようでもあったシャラメの、成長の妙演は見る者の心を引き寄せるに十分だ。
もちろん砂漠のスペクタクルは圧巻で、サンドワーム・ライドの描写は最強の見せ場。スタントや空撮を組み合わせ、その複雑な動きを自然なシーンに仕立てた視覚効果チームは、今回もオスカーの有力候補になりそうだ。
壮大な物語が遂に開幕
2時間半を超えた前作がまだまだ”序章”に過ぎなかったことがよくわかるシリーズ第2弾。ここから一気に物語が動き出します。壮大な叙事詩がいよいよ開幕と言ったところです。複雑に入り組んだ人間関係や思惑、過去と未来など要素が”盛り込み過ぎ”と言って良いほど盛り込まれ、正直一度見ただけでは把握しきった自信がありません。IMAXシアターでまず一回見て映像に圧倒された後、もう一度物語を追うことための再見が必要かもしれません。ティモシー・シャラメは大作のカリスマとして頼もしくなってきました。これからもこの路線で頑張って欲しいところです。
オースティン・バトラーがすごすぎる
これぞシネマ体験。できるだけ大きなスクリーンで観るべき映画。筆者はIMAXで観て、完全にその世界に引き込まれてしまった。アクションは前作以上の迫力、壮大な砂漠の風景は圧巻もの。数々のファイトシーンもそれぞれにユニークで息を呑む。パート1で多くのことを乗り越えた主人公ポールは成熟し、運命を背負うようになるため、ストーリーもよりドラマチック。ただ、次を予定しているからだろう、答がないままの問いかけも残されている。ポールとチャニを演じるシャラメとゼンデイヤはスクリーン上の相性ばっちりで、どちらもスターとしてのオーラたっぷり。しかし本作の目玉はなんといってもオースティン・バトラー。彼はすごい!
端正な映像が極まり、物語が大きく動き出す
映像は、どこまでも静謐かつ端正、そして豪奢。2つの月が影を落とす太陽の下、どこまでも広がる白い砂漠。砂を舞い上がらせて疾走する巨大なサンドワーム。先住民フレメンの居住地の壁に描かれた紋様。ハルコンネン家の惑星ジェディ・プライムに照りつける銀色の光線。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の美学が、画面の隅まで行き渡る。
物語も大きく動く。監督は、原作の続編小説『砂漠の救世主』の映画化作を加えて三部作にしたいと公言しており、本作の物語も三部作を見据えたもの。中でもチャニの人物像や行動に独自の解釈が施されて、監督がこの三部作で描きたいものが明確になってくる。とにかく映画第3作の実現を切望。
映画という芸術を追いかけ、現時点での最高の体験へ
SF映画が好きかどうか。また、日本では洋画離れが進んでるので受け入れられるか…。そんな杞憂も忘れ、ただひたすらに現在最高峰のビジュアルと、そこに生きる魂たちの狂おしい本能に浸っているだけで、至福の時間が過ぎていく。
前作の記憶が多少失われていても観始めればこの世界、人々の関係が説明的ではなく染みわたるように甦る。そんな作りもアーティスティック。新キャストでは超冷血なオースティン・バトラーが最高で、予定どおり昨年末公開だったら助演男優賞の可能性もあったのでは?
夕陽の美しさ、砂漠やスタジアムの目も眩む広大さ。巨大な物に対峙する勇気。何が起こっているか伝えるアクションの観やすさ。すべてが異常事態。