BAD LANDS バッド・ランズ (2023):映画短評
BAD LANDS バッド・ランズ (2023)ライター2人の平均評価: 3.5
予測不可能な姉弟のバランス
このタイトルにも関わらず、なかなか『地獄の逃避行』な展開にならないところに苛立ちも覚えるが、大阪・西成を舞台にしたエネルギッシュな犯罪劇に引き込まれていく。原田眞人監督が原作を改変し、久しぶりに描く女性主人公を安藤サクラが演じる安定感に対し、狂気と色気が相俟った弟役の山田涼介の予測不可能なバランスが興味深い。そのほかのキャラも立っているなか、『アイ・アム まきもと』後だと、ややインパクトに欠ける宇崎竜童より、『燃えよ剣』以来、原田組の常連である吉原光夫演じる刑事の存在感がスゴい。前作『ヘルドッグス』同様、セリフの聞き取りづらさはご愛敬だが、後半ウェットになり過ぎたのは悔やまれる。
何をしてでも、生きてやる!
オレオレ詐欺は日本全国をターゲットにしているが、大阪に舞台を限定し、詐欺集団の拠点として西成を設定。このつくりが面白い。
ほころびから崩壊していく詐欺集団の面々が、府警の監視の目を縫って、それぞれどう生きていくのか? 緊迫したサスペンスの中にも、関西弁のセリフ特有のユーモアが宿り、魅入ってしまう。
底辺の人間が生きていくのは大変……という大前提をベースにして生のエネルギーを活写。原作では男性だった主人公を女性に変換する原田監督の剛腕演出はもちろん、飄々としつつ、やるときはやる主人公にふんした安藤サクラの“顔”もインパクト大。彼女と、狂気の山田涼介の対比も絶妙だ。