イビルアイ (2022):映画短評
イビルアイ (2022)ライター2人の平均評価: 3.5
単なる魔女奇談には終わらない、寓話的ヒネリに注目
よくある魔女ホラーと思いきや、ヒネリの効いた面白さ。これはよくできている。
キーとなるのは、主人公の少女の13歳という年齢。性への憧れと恐怖を抱く彼女の体験を、現実とも妄想ともつかぬ世界観の中に埋め込む、その恐怖に加え、クライマックスの視点の転換により寓話的なムードも漂う。魔女の世界を、人間の大人の世界につなげる工夫が生きた。
アルジェント風スプラッターに、デル・トロ風怪奇ジュブナイルが融合したともいえる意欲作。『パラドクス』で注目されて以来、勢いに乗っている俊英エスバン監督は、また一歩先へと進んだ感あり。
13歳の少女の世界が、忌まわしいものに変わる
13歳の少女の目に映る世界が、忌まわしいものに変貌する。その変異は、この年齢のため入手する情報がかなり偏っていることと、この年齢の想像力の柔軟さに起因する。しかも彼女は、両親が自分より病気の妹を重視しているとの不満を抱きつつ、そんな自分を無意識のうちに嫌悪しているため、情緒的に不安定な状態にある。本作で描かれる恐怖が、そうした13歳という時期の普遍的な状態の上に構築されているところが妙味。
監督はメキシコ出身のイサーク・エスバン。『パラドクス』『ダークレイン』の変化球的ストーリーとは異なり、今回は古典路線。田舎の森、初対面の祖母、土地で語り継がれる伝説が、13歳の夢想の中で絡み合う。