あしたの少女 (2022):映画短評
あしたの少女 (2022)ライター2人の平均評価: 4.5
搾取された「あした」の少女の行方は?
チョン・ジュリの前作『私の少女』に続き、物語は現代韓国の諸相を示す要素を内包する。今回は露骨なパワハラと、それが「必要悪」とされる社会構造の問題だ。実際の事件を基にしたゴリゴリの社会派映画ではあるのだが、一種のミステリでもあるので詳細は書かぬが華ってもの。前作に続き主演を張るペ・ドゥナは138分中、32分経ってやっと数秒映るだけだが、それだけ後半に至る作劇術がちゃんと企まれていて、ほんのちょっとだけしか接点のなかった二人(もうひとりのキム・シウンも好演!)の感情がシンクロしていくさまが見事。ただすべてのカットが怒りと哀しみに溢れていて、かなりのダメージを心身に受ける作品だから覚悟して観るべし。
やるせなさに潰されそうになる
チョン・ジュリ監督の前作『私の少女』や是枝監督の『ベイビー・ブローカー』と同じく、ペ・ドゥナが男前な刑事を演じる本作だが、彼女が活躍するのは後半から。それまでは実習先のコールセンターで働き始めたことで、精神的に追い詰められていく一人の高校生・ソヒの日常が淡々と描かれる。強引に煽られる競争心、支払われない成果給、そして上司だったチーム長の自殺……と、大企業の下請け会社なら、どの国でも起こりえる負の連鎖。誰のせいともいえない、やるせなさに潰されそうになる138分だが、とにかく骨太な力作。邦題にはどこか希望を感じるが、観終わったときに刺さるのは、確実に原題(「次のソヒ」)である。