ブギーマン (2023):映画短評
ブギーマン (2023)ライター6人の平均評価: 3
キングを味方につけて生まれたティーンエイジホラー
原作はS・キングの短編で、その逸話を前半に置き、後半のモンスターホラーに発展させ逸品。
原作にはない十代の少女の視点から物語は紡がれ、怪物奇譚へと発展。そこには『It/イット~』のようなジュブナイル性に加え、『スタンド・バイ・ミー』的な成長劇の要素も含まれる。キングは脚本の段階から本作を支援したというが、自作の映画化では小話風の完結を好む彼の趣味に一致していたからか。
『ズーム/見えない参加者』『DASHCAM ダッシュカム』と、端末上の映像のみで恐怖を築き上げて評価された俊英サヴェッジの初の非主観ホラー。ジャンル映画好きとしては、彼の次の一手が楽しみになってくる。
時空超えたヤツを拳銃で殺せるのかい?
ブギーマンといってもジョン・カーペンター版のようなスラッシャーものでは全くない。大昔のスティーヴン・キングの原作を膨らませた、いわばモンスターものホラーだ。だが、定石にしっかりと乗っかってはいるものの、それだけであって、退屈はしないがそれ以上でも以下でもないのが難点。「ブギーマンは暗黒の中に出現するからできるだけ明るいとこにいなさい」と言われているのに、眠るときもプレステするときも暗いところで過ごすのはどうなのかという単純な疑問が残る(笑)。ただモンスター造形はそれなりにいいし、蜘蛛のような黒いもの、何か忌まわしいカビのようなものが生えまくる部屋など、不気味さはそこそこ備えている。
「普通の人々」を参考にした丁寧な人間ドラマの描写
前半はじわじわと緊張感を高め、そこに何かいるのか、いないのかと観客を不安にさせる。そうやってじらしておき、最後にドンと来るやり方がなんともうまい。ホラー映画ながら、ロブ・サヴェッジ監督とクリス・メッシーナはオスカー作品「普通の人々」を参考にしたとのこと。大切な人を失った悲しみに暮れる家族の様子が丁寧に描かれているのも、それで納得。このジャンルでは演技の質が見落とされがちだが、今作の主要キャストはみんなすばらしい。特にソフィー・サッチャーはスティーブン・キングからお墨をもらっただけのことはある。サヴェッジはこのジャンルの若手名監督としてこれからも活躍していきそうだ。
手堅い良質なホラー
ブギーマンというと何となくあの白いマスクの大男を思い浮かべてしまいますが、元を辿ればいわゆる”お化け”のことなんですよね。映画はノンスタ―映画ではありましたが、スティーブン・キング原作であり、監督のロブ・サヴェッジは新進ホラー作家として注目を浴びている存在。ということでびっくりするような新鮮さや目新しさを追い求めるとちょっと辛い部分もありますが、98分の上映時間も含めて、非常に手堅くしっかりとしたホラーを見ることができました。この監督、今後の待機企画もホラーが多いようで楽しみです。
奇をてらわない雰囲気重視の正統派ホラー
子供部屋のクローゼットやベッドの下などの暗闇に隠れ、悪い子をさらったり取って食ったりするという、民間伝承の魔物ブギーマンに狙われた一家の恐怖体験。原作はスティーブン・キングだが、小説版は8ページ程度の短編。ストーリーの大部分は本作のオリジナルと見做して良いだろう。基本路線は極めて折り目正しい古典的ホラー。出世作『ズーム/見えない参加者』と同様、ロブ・サヴェッジ監督は禍々しい雰囲気と適度なジャンプ・スケアを巧みに使い分け、徐々に恐怖を煽っていくのがとても上手い。それだけに、いざ蓋を開けてから盛り上がりに欠けるのは惜しまれる。特に、ブギーマンは最後まで具体的に見せない方が良かったように思う。
おしゃまなレイア姫ことヴィヴィアンが大活躍
怪異は視覚よりも、音響によって出現する。典型的な心理ホラーではないが、これもある種の心理ホラーなのではないか。幼い少女が体験する怪異は、彼女の心理による現象ではなく、そこにあるのだが、誰もが気のせいだと言い本気にしない。そういう恐怖。シングルファーザーの父親は、自分の問題にかまけて娘に向き合おうとせず、まったく役に立たない。高校生の姉は、同級生たちとの問題に気を取られている。そんな状況で健闘する幼い少女を『オビ=ワン・ケノービ』のレイア姫役ヴィヴィアン・ライラ・ブレアが好演。『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のポルカドットマンことデヴィッド・ダストマルチャンが、今回も怪演。