オペレーション・フォーチュン (2023):映画短評
オペレーション・フォーチュン (2023)ライター6人の平均評価: 3.2
ガイ・リッチー印の軽妙洒脱な英国スパイ・アクション
武装集団によって強奪された「あるもの」。それが具体的に何なのか誰も知らないが、しかし100億ドルで裏取引されるほど重要なものらしい。この謎に満ちた盗品を回収するため、ジェイソン・ステイサム率いる英国諜報員チームが世界を股にかける。ガイ・リッチー監督にとっては『コードネームU.N.C.L.E.』以来となるスパイ物だが、まあ、軽妙洒脱なノリはいつものガイ・リッチー映画という感じですな。このマンネリ感を良しとするか否かで評価は分かれるだろう。個人的にオーブリー・プラザのヒロイン起用が嬉しかったものの、しかし彼女のブラックで毒っ気のあるクセモノぶりを十分に活かしているとは言えないのが惜しまれる。
お茶目なステイサムはいかが?
同じガイ・リッチー監督作でも、バリバリに硬派でシリアスだった『キャッシュトラック』から一転、今度はジェイソン・ステイサムが世界を駆け巡るMI6工作員をコミカルに演じる。そんなお茶目さを求めているか、どうかで評価は変わってくるが、『コードネーム U.N.C.L.E.』にはならなかったのは事実。テンポよく見やすいのは事実だが、『ジェントルメン』の延長線上にあるアヤしいヒュー・グラントに、うだつの上がらない上司役のケイリー・エルウィス、有名スター役でイジられるジョシュ・ハートネットなど、しっかりキャラ立ちしながらも、それらを活かしきれないのは脚本に問題アリとも取れる。
せりふは絶妙、キャラクターは美味しい
ここ数年、ガイ・リッチーは映画監督としてますます成熟してきていると感じる。彼らしさはキープしながらも、スタイル重視になりすぎず(だがもちろん洗練されたスタイルはある)、うまい具合にパンチを効かせるのだ。この映画も、せりふは絶妙、キャラクターも美味しくて、笑わせてくれるシーンがたっぷり。ヒュー・グラント、ジョシュ・ハートネット、オーブリー・プラザはとりわけ良い。「ジェントルメン」でも映画業界をネタにしたが、今回も痛快な形でそれをやっている。日本ではこれから公開の最新作「The Covenant」も全然違うタイプの映画ながら最高だったし、リッチーは個人的に今とてもエキサイティングな監督だ。
監督×ステイサムの名コンビだけど、まわりがけっこう楽しい
主人公はジェイソン・ステイサムの有能エージェントで、相変わらず痛快で無敵の活躍を見せてくれるものの、どこか既視感もあって逆に印象が薄れがち。その分、ヒュー・グラントの怪しさ&妙な欲望のぎらつき、スター俳優役のジョシュ・ハートネットの恐怖と快感に溺れる自虐的名演、天才ハッカー役、オーブリー・プラザの艶やかなコミカルさ…と共演陣の魅力が格別。こちらも既視感のある物語を賑やかに楽しく見せ切っている。
『明日に向って撃て!』など映画ファンへの目配せも粋。
ハリウッド、金持ち武器商人といった設定を、ゴージャスなネタと映像で盛り込むあたり、エンタメとして王道なので、万人に素直にオススメできる一作。
ヒュー・グラントはじめ、いかがわしい大人たちが楽しい
ガイ・リッチー監督自身の『ジェントルメン』系のコミカルなアクションだが、無愛想なジェイソン・ステイサムを中央に据え、舞台はカンヌ、モロッコ、トルコと南に向かい、ノリは英国流のタイトさに南国らしいユルさが掛け合わされて、そこが今回の妙味。
そのうえ、ヒュー・グラント演じる富豪の武器商人は、彼が『ジェントルメン』で演じた不謹慎な私立探偵よりも、さらにいかがわしさがパワーアップ。かつてはグラント同様、英国の貴公子役俳優だったケイリー・エルウィズも、主人公の食えない上司役を楽しそうに好演。ハリウッドスター役のジョシュ・ハートネット、リッチー監督作の常連エディ・マーサンらの共演ぶりも楽しい。
笑って楽しめる、いかにもG・リッチーなスパイ活劇
G・リッチー作品では『ロック、ストック~』等の初期作品に回帰したようなアップビートとユーモア、スリル。そこに『コードネームU.N.C.L.』的スパイ活劇の妙を絡めた点が面白い。
物語自体は諜報劇だが、とにかく笑えるつくり。ステイサムの初登場シーンからして吹き出すし、彼と共演者とのかけあいもコミカル。とりわけヒロイン、A・プラザの艶笑や映画スター役のJ・ハートネットのおとぼけが効いている。
ツッコまれ役の無骨なステイサムは扇の要に位置するものの、基本的には『ロック、ストック~』的群像劇スタイルのキャラクター配置。憎めない武器商人役でおいしいところを持っていくH・グラントにも注目。