違う惑星の変な恋人 (2023):映画短評
違う惑星の変な恋人 (2023)ライター2人の平均評価: 4.5
愛らしいほどに、全員片思い
大谷健太郎~今泉力哉監督の系譜といえる“男女のどうでもいい会話劇”を撮らせたら、今いちばん面白い木村聡志監督の最新作にして、最高傑作。登場人物の片思いのベクトルが決して交わらない群像劇としての面白さは、タイトルの元ネタと取れる『恋する惑星』に通じるものがあるが、『愛なのに』超えの笑いを取る中島歩を始め、みんな絶妙にズレているため、どこか愛らしい。おしゃれ映画に見えつつ、綱啓永演じるモーのあだ名の由来が牛田モーだったり、長嶋茂雄の「ん~、どうでしょう?」な会話が繰り返されたり、昭和世代にツボる小ネタも少なくない。そして、コメディエンヌとして大化けした莉子は一見の価値アリ。
恋愛遊戯を冴えたルールでデザインする妙技
これは傑作。木村聡志監督の個性がひとつの完成形を示したと言える第3作だ。「ポスト今泉」との文脈で語られがちな彼だが、今回は『ビッグ・リボウスキ』的冒頭から、渡辺雄司のファンキーな音楽が鳴り響き、与太話メインの会話劇が展開。全体は『ジャッキー・ブラウン』のグルーヴでスクリューボールコメディをやった様な趣。
独特の屁理屈と小ネタを律儀に構築する台詞の面白さに加え、フォーメーションを組むという発想が劇の強度を支える。「4人+1人」から成る恋愛ゲームの規則を、中島歩ら魅惑の選手達がプレイする。W杯に合わせたスポーツバーでの席替えが白眉。空間と位置で関係性のゲームを可視化させて遊ぶ。何て映画的だろう!