サンクスギビング (2023):映画短評
サンクスギビング (2023)ライター4人の平均評価: 3.8
世情を見据え、笑えるほど血糊を飛ばす行事ホラー
デビュー作『キャビン・フィーバー』以来、E・ロスがホラーの鬼才と認められたのは恐怖描写はもちろんのこと、人間の心理や社会性が的確にとらえられているから。グラインドハウス色濃厚な本作でも、それは変わらない。
米国の祝日である感謝祭に惨劇が起こる。そこに浮かび上がるのは、“行事”を利用して稼ぐ売る側の欲と、安さに釣られる買う側の狂奔への批判的な視線。これがあるだけで、スリラーがグッと締まる。
もちろんスプラッターの強度も十分で、人体損壊の描写でドキっとさせつつ、トランポリン惨殺などの場面ではブラックユーモアも。ロスのジャンル映画愛を存分に感じることができる。
感謝祭の定番アイテムをスプラッター化
サンクスギビング=感謝祭は、収穫を感謝して祝う真面目な伝統行事。本作では、そんな感謝祭の定番アイテムの数々-----高校生たちのパレード、アメリカン・フットボール、七面鳥の丸焼きといったものが、次々に連続殺人鬼によって残虐なものに変形され、感謝祭がブラック風味のパロディになっていく。そういう不謹慎なことを嬉々としてやる中学生っぽい感覚が本作の醍醐味。イーライ・ロス監督が久々にかつての『ホステル』の世界に戻り、スプラッター映画らしい"突然の過剰な暴力"をたっぷり堪能させてくれる。
それとはタイプの違う恐怖が出現するのが、冒頭の感謝祭特別セールの群衆暴動シーン。集団が生む暴力がリアルで怖い。
イーライ・ロス監督なりのスラッシャーホラー
冒頭で描かれるブラックフライデー大暴動のシーンがあまりに良くできていることから、「まさか!?」とは思ったが、その後は笑える王道スラッシャーホラーな作りをしっかり継承。ちょっと『ファイナル・デスティネーション』シリーズ入ったバラエティに富んだ殺し方に、頭っからR-18指定狙ったトゥーマッチなゴア描写も交えつつ、16年前のフェイク予告編に登場したシーンもちょいちょい再現。良くも悪くもイーライ・ロス監督作として着地しているが、実現してくれたことに★おまけ。そして、本作に続き、『サン・セバスチャンへ、ようこそ』でもいい味出してるジーナ・ガーション。熟女キャラとして、まさか再ブーム到来か?
大変気の利いたホラー
『グラインドハウス』から16年と聞いてちょっと驚くところがありましたが、待ったかいがありました。ホラー職人イーライ・ロスが大変楽しい痛快なR-18スプラッターホラーを仕上げてくれました。一言で言えば痒い所に手が届く大変気の利いたホラーです。欲しいところに欲しい展開を持ってきてくれます。106分があっという間でした。一方でブラックフライデーの狂騒を描いたり、地方の労使関係を盛り込んだりしてちゃんと一本の長編映画になっています。監督自身も満足度が高く早くも続編があるとか、期待大です。