辰巳 (2023):映画短評
辰巳 (2023)男たちの燃焼力、女性キャラの強靭さ。8年待った甲斐のある新作
今や絶好調の毎熊克哉の原点を作った『ケンとカズ』から8年ぶりの小路紘史監督の新作だけあって、今回も男たちの濃厚な執念の香りが全編に蒸せ返る。深読みさせる絆も含め、一時期の北野武映画を彷彿とさせるが、前作からのアップデートは女性キャラクターの強靭インパクト。ここはスクリーンで素直に平伏すべき。
メインキャストの壮絶なまでの“眼力”。バイオレンスの的確な容赦のなさ。その先の運命に想像力がはたらくクライマックス。そして何より、人間が命を燃焼し尽くすパワーの官能に終始呑み込まれる。セリフが聞きづらい部分もあるが、その曖昧さが逆に心情を生々しく伝えているとしたら、演出の勝利。日本映画の未来も感じる力作。
この短評にはネタバレを含んでいます