Shirley シャーリイ (2019):映画短評
Shirley シャーリイ (2019)ライター2人の平均評価: 3.5
優れた心理スリラー。フェミニズムのニュアンスも
ホラー作家シャーリイ・ジャクスンという人物に、典型的な伝記映画としてではなく、まるで彼女が書く小説のようにアプローチするところがユニーク。この映画のシャーリイは、天才ではあるが気難しく、予測不可能で、登場するたびにシーンを緊張させる。若い女性ローズは一見まるで対照的ながら、その時代の女性である彼女らは実はそう違わないということがわかっていく。優れた心理スリラーの奥には、フェミニズムのニュアンスがあるのだ。そこを伝える上で、男優たちはすばらしい仕事をしている。マイケル・スターンバーグは見るからにすごいし、ローガン・ラーマンのさりげなさも良い。もちろんふたりの女優陣も最高。
シャーリー・ジャクスン自身を、彼女の小説のタッチで描く
「たたり」「ずっとお城で暮らしている」の小説家シャーリー・ジャクスン自身を題材に、彼女の小説のような雰囲気の映画を撮る-------この監督のコンセプトが明確。普通のようでいて、恐ろしい。この人物の複雑さ、危うさ、面倒臭さが、彼女の家に同居することになった女性の視点から暴かれていく。エリザベス・モスは、こういう何かの熱量が過多な人物の役がよく似合う。
撮影はノルウェー出身、『イノセンツ』『最後にして最初の人類』のシュトゥルラ・ブラント・グロヴレン。暗い室内の多い画面は、色調も光線も質感も常に写実よりも幻想に傾き、これがシャーリー・ジャクスンの世界であることを強調し続ける。