アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家 (2023):映画短評
アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家 (2023)ふたりのアーティストの魂に触れるような体験
ドイツが誇る巨匠ヴィム・ヴェンダースが、やはりドイツ出身の偉大な芸術家アンゼルム・キーファーに敬意を捧げるこの映画は、典型的なドキュメンタリーの形式にはまらない、詩的で、瞑想的で、独自の美学を持つ作品。2年かけて撮影したヴェンダースは、キーファーの優れた作品の数々を見せながら、自身と同じ1945年に生まれたキーファーが暗い歴史に背を向けようとする人々に対して持つ疑問や、彼の哲学を紹介していく。子供の頃のキーファーをヴェンダースの甥、20代の頃の彼をキーファーの息子に演じさせたフィクションのシーンも、浮くことなく自然。ふたりのアーティストの魂に触れたような気分になれる。
この短評にはネタバレを含んでいます