ユニコーン・ウォーズ (2022):映画短評
ユニコーン・ウォーズ (2022)ライター2人の平均評価: 4.5
21世紀の「ゲルニカ」は過激に弾ける!
監督のA・バスケスはスペインのコミック作家とのことだが、それも納得のポップな画作り。愛嬌のあるテディベアやユニコーンのビジュアルにブラックユーモアが結びつく。
紫色を基調にした色彩は陰と陽が混在する強烈な世界。物語も同様で、テディベアの小隊の進軍は殺りくやサイケデリックトリップに彩られ、破滅的なクライマックスへと向かっていく。当然、脳裏への焼き付きも強烈だ。
擬人化されたテディベアの行状は人間の愚の象徴だが、神話的な結末ではそれがより明確に提示される。戦争の悲惨をシュールに描いているという点では21世紀の「ゲルニカ」か!?
ゆるキャラで伝える神話〜現在に至る戦いの不毛。衝撃の逸品
メインビジュアルと内容のギャップを狙う作品は数多くあったが、ここまで愕然とするレベルは珍しい。主人公たちはテディベアの兵士で、完全に癒し系アニメキャラというデザイン&動き。しかし彼らが立ち向かうのは凄絶を極めた戦闘で、しかもその描写には、日本で例えるなら日野日出志のホラー漫画か…と思えるグロさも伴っている。その風景を観ながら、『プライベート・ライアン』や『野火』などリアルな戦場映画のシーンが蘇る。アニメによる究極のマジック。
「聖戦」という名目の無駄な戦い。永遠の命と美しさへの欲望。マッチョ思想。家族の屈折した感情に翻弄され続け、ラストに立ち現れる者の姿から恐るべき現実を突きつけられ、鳥肌。