トランスフォーマー/ONE (2024):映画短評
トランスフォーマー/ONE (2024)ライター3人の平均評価: 3.7
ここから観ても楽しめる"オブティマス元年"
宿敵が昔は親友だった……という設定は映画版『X-MEN』サーガのプロフェッサーXとマグニートーの関係を想起させる。友情の崩壊にどんなドラマがあったのか? まさしく、そこがミソ。
これまでの作品と異なり舞台が地球ではなくサイバトロン星で、その底辺で生きている若きオプティマスとメガトロンの物語。両者の気持ちが理解できるつくりで、そのバランスのよさが味。
もちろん、ここからシリーズを後追いしても楽しめるし、難しいことを考える必要もない。スピード感あふれるカーレースや荒野の冒険など見せ場が随所に盛り込まれ、ライド感覚を大いに刺激するエンタメ作品でもある。
機械生命体のみが存在する世界の感触が味わえる
タイトル通りの"イヤー・ワン"、始まりの物語。オプティマス・プライムがどのようにして誕生したのか、その名前はどこから来たのかが、今、起きている出来事として目の前で展開し、トランスフォーマーの歴史的事件に立ち会う興奮を与えてくれる。メガトロン、ディセプティコンの誕生も目撃できる。
新鮮なのは、人間の俳優が登場しない、機械生命体のみが存在する世界の感触。舞台は全盛期のサイバトロン星。地表には金属以外の物質も存在するが、地下都市は金属のみで構築されている。地表に、鹿のような形の群で行動する機械生命体がいるのも新鮮。機械のみの世界で、トランスフォーマーたちがこれまで以上に感情豊かに見える。
実写でなくなったこと。それは納得の流れ。キャラの体温は上昇
カリスマキャラが「未熟」だった時代を描くこと。つまり成長譚は映画の王道と再確認できる一作。故郷サイバトロン星が舞台なので、人間や地球上の風景が一切出てこないことから、オールCGも当然の選択。最先端テクノロジーが駆使された大都市から、過酷な労働を強いられる地下まで、めくるめくビジュアルに息をのみ、そこで行われるダイナミックな“イベント”に心拍数が上がる。
各キャラは、特に顔の下半分の表情が豊かで、これは実写シリーズと一味違う趣。体温が加わり共感度も増す仕掛けだ。熱い友情関係にどんな運命が待つのか。われわれは、その行方を知っている。悪がどう誕生するのか。人間の現実社会とも重なって切ない余韻が残る。