蝶の渡り (2023):映画短評
蝶の渡り (2023)戦火を乗り越えた老ボヘミアンへのラプソディ
21世紀のジョージアにボヘミアン風の自由人たちが本当にいるかどうかはわからないが、このような映画がつくられると嬉しくなる。
昔の戦争の傷を負い続けながらも、悠々自適に生きるアーティストたち。混沌とした彼らの初老ライフは“ここでは誰も俺たちを必要としていない”という言葉どおり悲惨にも見える。が、自由の代償として貧しさを受け入れる潔い生は、むしろ陽性で魅力的でもある。
久々の日本公開作となるジョルジャゼ監督が、風に乗れずどこにも行けない蝶の絵画に託したメッセージは温かくも切なく、そして滋味深い。
この短評にはネタバレを含んでいます