リボルバー・リリー (2023):映画短評
リボルバー・リリー (2023)ライター3人の平均評価: 4
今すぐにでも彼女の数年後の姿を見せて欲しい!
あのボリュームある原作を、波瀾万丈な展開を残しつつも、まさにスパイ映画らしく謎は謎のまま…いわばマクガフィンとしてタイトにアレンジしてみせた脚本力に目を見張る(それでもメッセージはちゃんと伝わる)。主人公である百合が隠棲する花街・玉の井(「ぬけられます」の表示は神代辰巳オマージュか)など、大正期の風俗美術にも魅了。しかしなんといっても素晴らしいのは全編に仕掛けられたアクション設計だ。荒波飛び散る旧東映マークを冠するにふさわしく、濃霧の中のクライマックス(360度音響!)へと向かう百合が白いドレスに身を固める…映画好きならこのドレスが何色に染まるのか、それだけで大興奮というもの!
大正ロマンにハードボイルドが融合
ハードボイルドな空気に大正~昭和ノスタルジーが組み合わさる。そんな世界観の作り込みが光り、銀座の風景をとらえた冒頭から引き込まれ、玉ノ井の赤線地帯のいかがわしさにも魅了される。
静と動を使い分けたアクションは日本映画らしい作りで、様式美を感じさせる。『ジョン・ウィック』が作られる時代だけにガンアクションのスピード感は物足りないが、綾瀬はるかの身体や所作を活かした“型”がサマになっており、それだけでも魅力を放つ。
ドラマ的には登場人物に感情移入するまでに時間がかかるが、抑制のタッチととらえればさほど気にならない。阿部サダヲのあの役へのキャスティングが意外で妙味アリ。
”意地”を感じさせるアクション大作
「お金をかけて邦画実写を創る!!」という創り手のある種の”意地”を感じさせる一本。ど真ん中にいる綾瀬はるかはアクションの素養がある人なので、非常に満足感があります。日本においてガンアクションを成り立たせるには舞台設定に工夫が必要ですが、巧く仕上げたと思います。行定勲監督にとっては初の本格アクション作品となりますが、これまでも”活劇的”な演出はしてきた人なので安心感があります。豪華な面々が揃った共演陣ですが、長谷川博己がとてもチャーミングで良かったです。手間暇かかった衣装、美術、セットにも注目です。