悪魔と夜ふかし (2023):映画短評
悪魔と夜ふかし (2023)ライター4人の平均評価: 4.3
怖いことが起きる前も十分面白い
アメリカの深夜トーク番組のスタイルは、ジョニー・カーソンが大人気を誇ったこの映画の舞台の頃から今もほぼ変わらない。デビッド・ダストマルチャンはこれらの番組の司会者のエッセンスを完全につかんでおり、裏側の様子もリアルで、怖いことが起きる前からすっかり入り込んでしまった。舞台となる日は番組の運命を決めるのに重要な週の月曜日で、主人公は強いプレッシャーを感じている(1977年が選ばれたのは、70年代でハロウィンが月曜日だったのはこの年だけだったから)。ホラーであると同時に、視聴者(現代ならネット記事の読者もだが)を引き込むためにはなんでもやるメディアへの風刺でもある。楽しませてもらった。
1970年代のショービズ界の空気感も再現!
導入部こそ、『食人族』的な「封印されたマスターテープ発見!」だが、そこからの作り込みがお見事! トーク番組のホストの波瀾万丈な人生を振り返り、崖っぷちからの起死回生を狙った生放送に突入。分かりやすく言えば、激論が交わされる「11PM」の心霊・オカルト特集がとんでもない事態に陥るのだが、旬なゲストに、ノリノリの観客、さらには生バンド演奏と、どちらかといえば「サタデー・ナイト・ライブ」な番組構成がたまらない。1970年代のショービズ界の空気感もしっかり再現しており、ケアンズ・ブラザーズ監督作としても、しっかりアップグレード版『スケア・キャンペーン』になっている。
驚くほど完成度が高いファウンドフッテージ系ホラーの快作
スタジオ生放送中に悪魔を招聘したところ大惨事へ発展!それっきり封印された’70年代アメリカの人気深夜トーク番組の、問題エピソードの録画テープが発掘されました!という設定のファウンドフッテージ系ホラー。いやあ、これが驚くほどよく出来ている。オカルトやユリ・ゲラーやサタニストが世間で話題を呼んだ’70年代の空気感、今よりも規制が緩かった時代のトーク番組のノリや雰囲気もよく再現されており、なおかつヤラセなのかガチなのか分かりづらいギリギリのラインを狙って展開していくスリリングな語り口も絶妙。終盤、ファウンドフッテージという設定を考えると不自然に思えるシーンもあるが、トータルでの完成度は極めて高い。
"発見された映像”に'70年代オマージュとヒネリが大盛り
番組視聴率のために魂を売った人々は悪魔の同類だが、悪魔はその上を行く。ホラー映画の定番「発見された映像モノ」に、ヒネリ技が大盛り。1977年の生放送トークショー番組の降霊術の収録映像という設定で、70年代のホラー映画やTV業界映画へのオマージュが満載。収録が進むにつれて、出演者たちの意外な素性や人間関係が明らかになっていく。監督・脚本はオーストラリア出身のコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟だ。
司会者役で主演する『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』のポルカドットマン、デヴィッド・ダストマルチャンが、本作に惚れ込んで製作にも参加。この俳優ならではの怪しい気配を楽しそうに演じている。