トラップ (2024):映画短評
トラップ (2024)ライター4人の平均評価: 3.3
自慢の娘の見せ場はたっぷりだが
設定は面白いものの、ストーリー展開があまりに都合良すぎて、信憑性に欠ける。コンサート中で大忙しの従業員が、今会ったばかりの客と無駄なおしゃべりをして秘密まで漏らす?あれだけ大勢のファンがいる会場でうまいことスターの叔父を発見し、簡単に嘘で丸め込むことができる?テイラー・スウィフト並みのスターは、ボディガードをつけていない?そもそも近年、チケットはオンラインで買うものでは?そういうことはほかにも多数。せりふにも現実味がない(あの状況でパイを食べましょうなんて言うか?)。まあシャマランとしては、娘サレカに見せ場をしっかり与えてあげられただけでもメリットがあったのかも。
ツイスト勝負ではない正統派
これまで数々の作品で”仕掛け”を展開してきたM・ナイト・シャマランの最新作はその名もずばり『トラップ』。はてさてどんなツイストを利かせて来るのかと思いきや、なんとなんと意外なほどに(ネタバレ的な)隠しどころのないスリラーとなっていました。ジョシュ・ハートネット演じる主役がシリアルキラーであることはかなり早い段階で明らかになり、それを捕らえるためだけに大人気シンガー(監督の次女が演じている)ライブを壮大なトラップに仕立て上げます。どのキャラクターに感情移入するかで見え方がだいぶ変わってくる作品ですね。
細かな仕掛けが積み重ねられていく
M・ナイト・シャマラン監督といえば、物語全体をひっくり返す大仕掛けが得意技だが、今回は新機軸。設定は最初から明かされていて、その中で、細かな攻防戦の数々が積み重ねられていく。巨大コンサート会場という空間に閉じ込められた犯人は、FBIが仕掛けた数々の罠をどう発見し、どう回避し、逆にどんな罠を仕掛けていくのか。
主演のジョシュ・ハートネットは、近年、ガイ・リッチー監督の2作、『キャッシュトラック』『オペレーション・フォーチュン』でメジャー映画に復帰し、『オッペンハイマー』にも出演。娘を愛する優しい父親、冷静な知能犯、アブナいサイコと、さまざまな顔を場面ごとに瞬時に切り替えて熱演。
ツッコミどころも「芸」となるシャマランの本領
これまで父の作品に楽曲を提供したこともある長女サレカが、本作では演技でもカリスマミュージシャン役を堂々体現。もちろん歌唱力も含めステージパフォーマンスは一級品で、舞台演出も本格的。それだけで元は取れる一作。
カギを握るのはジョシュ・ハートネットの演技だが…そこは微妙なライン(わかりやすいとも)。
コンサート中なのにロビーが人でいっぱい、あからさまな警備体制などツッコミどころ多数も、シャマラン作品に耐性できてる人なら無問題だろう。スリラーとしての展開にこれだけ温かい目でハラハラできるのは、この監督以外に無理。笑いのスパイスも適量だし、予想不能、ドンデン返しと違うレベルなのも、近年の彼らしいかも。