グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 (2024):映画短評
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 (2024)ライター6人の平均評価: 4
1800年前の世界に、今が見える
辛うじて黄金時代に足をかけていた前作の帝政ローマ。そこから斜陽まっしぐらの時期を背景に、新たな剣闘士のドラマを紡ぐ。すなわち、前作以上に大衆がヒーローを求めている時代の話。
民は飢え、帝政への不満は高まり、国家は破綻寸前。そこで暗躍する有象無象を描きながら、ひとりのグラディエーターの生を中心に置く。前作に比べて、おとぎ話性が増したが、希望が見えにくい時代に、この物語はある意味タイムリー。
前作同様CGに頼ってはいるが、セットは壮大になり絵的な迫力を増した。インフレを考慮しても大幅増の、前作の推定2.5倍の製作費が、それを物語っている。
王道でハイクオリティのエンタメ超大作
これぞ、ハリウッドの王道娯楽超大作。クラシックで共感できる話を最高のクオリティで語った良いお手本。バトルシーンは1作目同様、バイオレンスと迫力がたっぷり。前回リドリー・スコットがやりたかったのに不可能だったヒヒとの戦いも入るなど、斬新さも。誰もがやりたかったに違いないこの映画の主演の座を獲得したポール・メスカルは、激しいアクションシーンを見事にこなしながらも、静かなシーンでは彼が知られるところである、繊細でニュアンスのある演技を見せる。だが、それ以上にインパクトをもたらすのは、デンゼル・ワシントン。何度も組んでいるスコットは、彼が喜ぶとわかっている美味しい役を提供してあげたようだ。
趣向を凝らしたバトルを用意!
年1ペースで安心・安全の大作を提供するリドリー・スコット監督が、『エイリアン』以外の続編を手掛けたことに驚き! 『aftersun/アフターサン』『異人たち』の繊細キャラの印象が強いポール・メスカルがマキシマスの息子を演じることも意外だが、これがなかなかの大健闘。そして、『ナポレオン』『ゲティ家の身代金』で組んだデヴィッド・スカルパによる脚本だけに、勧善懲悪だった前作に比べ、デンゼル・ワシントン演じる一筋縄ではいかないキャラが「継承」の物語をけん引。剣闘バトルも突然変異なサルが襲ってきたり、『ジョーズ』×『ウォーターワールド』なUSJ風だったりと、趣向を凝らして飽きさせない。
求めるものは想定以上に揃えられた正統な続編
この作品に求めるものはハイレベルで提供される。冒頭のアニメーション、そして最初のカットで前作からの美しい橋渡しをするリドリーのセンスでまず魅了。『ナポレオン』をも超えた豪烈さの戦闘アクション、そしてもちろんコロセウム他での剣闘士バトルでは、目を覆うような残虐モーメントもあり、そこにこの巨匠のメッセージを読み取ることが可能。
主演のP・メスカルは大観衆に訴える芝居など舞台での名演経験が生かされ、カリスマ度は満点。怒りと復讐心が鮮やかに伝わる。デンゼルの悪っぷりは名演とはいえ、これくらいは余裕だろう。
後半の怒涛の展開にやや“駆け足”感があるが、その勢いとともに重量級の後味がもたらされるのは確か。
土埃が舞う古代都市ローマを味わう
無数の人間たちがそれぞれに動いている大きな空間を描く光景が、何度もスクリーンに広がり、そのたびに圧倒される。海に面した城塞都市に、海から何隻もの戦船が接近して勃発する激しい海戦。巨大な円形闘技場を含む、華やかな大都市ローマを俯瞰する大きな景観。その闘技場の客席で罵声を浴びせ、喝采し、感情を露わにする市民たちの大群衆。リドリー・スコット監督が描くこれらの光景がみな、絵画のような趣でありつつ、壁面の手触りをも感じさせ、古代ローマはこうだったのではないかと思わせる。
リドリー・スコット監督は、主演のポール・メスカルを企画中の新作の主役にも起用。本作で彼に惚れ込んだのに違いない。
続編は群像劇へ
前作は2000年当時の若さと勢い、野心と荒々しいカリスマ性を持っていたラッセル・クロウを主演に迎えたヒーロー活劇でありましたが、その続編となった本作は群像劇とシフトチェンジしていました。前作はコンモドゥスというわかりやす悪役が設定されていたので、お話もシンプルでしたが、今回はかなり入り組んだ物語になっていて策謀劇と言った趣もあります。今作は二転三転するストーリーを追う楽しさがあります。主人公を任されたポール・メスカルは大健闘していたと思います。肉体改造も含めて重責を務め上げました。文句なしの超大作史劇でありますので、是非大画面で。